米ハイスター・エール、25年7〜9月売上は4%減の9億7,900万ドル

・関税コスト増と需要低迷で減益、在庫適正化で営業キャッシュフロー改善

ハイスター・エール(Hyster-Yale, Inc. ):2025年11月4日

米クリーブランド発 ― フォークリフト大手のハイスター・エール社(NYSE: HY)は11月4日、2025年第3四半期(7〜9月期)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比4%減の9億7,900万ドルとなり、関税コストの増加と受注量減少により営業利益は前年を下回った。一方、在庫効率化により営業キャッシュフローは3,700万ドルと前四半期比で改善した。

■リフトトラック事業、全地域で出荷台数減

主力のリフトトラック事業の売上高は9億2,900万ドルで前年同期比4%減少した。経済の先行き不透明感が続く中、顧客の設備投資意欲が減退し、全製品ラインで出荷台数が減少したことが響いた。

地域別では、米州で特に1〜3.5トンクラスの高付加価値モデル(クラス4・5の内燃機関車)の販売が減少。同社は顧客が設備稼働率の低下や製造業全体の生産減少を受けて購入を先送りしていると分析している。欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域は、為替の好影響により増収となった。

営業利益面では、鉄鋼輸入に対する新関税を含む関税コストが第3四半期だけで約4,000万ドルに達し、収益を大きく圧迫した。同社は価格転嫁を進めているものの、出荷台数減少の影響を完全には相殺できていない。

■第4四半期は営業赤字を見込む

同社は第4四半期について、生産調整の影響で第3四半期の営業黒字から一転して「適度な営業損失」を見込んでいる。関税コストは第3四半期並みの水準が続く見通しだが、グローバル調達の見直しやサプライチェーン改善、コスト最適化などの緩和策を推進するとしている。

受注面では、第3四半期の受注額が3億8,000万ドルと前四半期の3億3,000万ドルから改善したものの、出荷が受注を上回る状況が続いており、受注残高は13億5,000万ドルと前四半期末の16億5,000万ドルから減少した。
同社は「顧客の購買判断は金利低下や関税交渉の行方など、マクロ経済要因に大きく左右されている」と指摘。見積もり活動は活発化しているものの、マクロ経済の不透明感が解消されるまで本格的な受注回復には至らないとの見方を示した。

■在庫削減とコスト構造改革を推進

厳しい事業環境の中、同社は運転資本の最適化を最優先課題に掲げている。第3四半期末の運転資本は売上高比20%と前四半期比で3,000万ドル削減した。為替変動と関税の影響を除くと、在庫は前年同期比1億5,500万ドル、前四半期比3,500万ドル減少している。

2024年に開始した製造拠点の合理化と業務効率化プロジェクトは、当初予定より遅いペースながら進行中で、2027年までに年間3,000万~4,000万ドルの収益・キャッシュフロー改善効果を見込んでいる。

同社は事業サイクル全体で営業利益率7%を目標としているが、市場の不透明感と関税負担により短期的には「この目標を大きく下回る」見通しだ。一方で、長期的には固定費削減、収益基盤の強化、革新的な新製品投入により、景気後退期でも収益性を維持できる体質への転換を目指すとしている。
なお、アタッチメント子会社のボルツォーニは、低採算レガシー製品の段階的廃止と需要軟化により減収減益となったが、製品ミックスの改善により粗利益率は維持している。

同社は「ポートからホームまで、世界中のマテリアルハンドリングを変革する」というビジョンのもと、倉庫用フォークリフト、自動化技術、エネルギーマネジメント事業などの新規領域開拓を進め、長期的な競争優位の確立を図る方針だ。​​​​​​​​​​​​​​​​

ニュースリリース

第3四半期プレゼン資料