・持続可能な「アルカリ浸出法」を活用し、リチウム供給拡大と脱炭素化に貢献
日揮ホールディングスは11月4日、海外EPC事業会社である日揮グローバルが、フィンランドのメッツォ(Metso)とリチウム精錬分野での協業に向けた非独占的覚書(MOU)を10月29日付で締結したと発表した。メッツォが独自開発した環境負荷の少ない「アルカリ浸出法」を活用し、リチウム生産の持続可能性と経済性を高める新たなビジネス展開を目指す。
■リチウム精錬の環境課題に対する新技術
リチウムは電気自動車(EV)や蓄電池などに不可欠な重要鉱物として世界的な需要が急増しているが、資源分布や精錬技術が一部地域に偏在し、安定供給が課題となっている。現在主流の「硫酸焙焼法」は、腐食性の高い硫酸を使用することから中和や不純物除去の工程が複雑で、副産物や残渣による環境負荷が指摘されてきた。
これに対し、メッツォの「アルカリ浸出法」は、アルカリ溶液でリチウムを抽出するプロセスで、硫酸を使用せず薬剤消費量や残渣発生量を大幅に削減できる。生成される残渣は化学的に安定しており、建築資材への再利用も可能なことから、環境負荷を抑えた持続可能な精錬技術として注目されている。さらに設備構成を簡素化できるため、初期投資および運転コストの低減にも寄与する。
■EPC実績を生かした日揮グローバルの参画
日揮グローバルは、非鉄製錬分野で高圧酸浸出法(HPAL)を用いたニッケル製錬プラントを世界で複数納入した唯一のEPC企業として知られている。この分野で培った高度なエンジニアリング技術とプロジェクト遂行力を基盤に、今後はメッツォとのシナジーを通じて非鉄製錬市場での競争力を一層強化する考えだ。
MOUのもと、両社はメッツォの技術支援やパイロット試験、ライセンス供与などを進めながら、日揮グローバルが有する顧客基盤を活用し、日本、東南アジア、中東などを中心に提案活動を展開。FS(フィージビリティスタディ)やFEED(基本設計)を経て、将来的にはEPCおよびO&M(運転・保守)における協業も視野に入れる。
■持続可能なリチウム精錬で脱炭素社会に貢献
日揮グループは今回の協業を通じて、世界最大級の鉱物・金属処理技術プロバイダーであるメッツォと連携し、環境に配慮したリチウム精錬ソリューションを提供する。両社はリチウムの安定供給体制を確立し、エネルギー転換と脱炭素社会の実現に貢献していく方針を示している。
<Metso(メッツォ)概要>
所在地:フィンランド・エスポー
事業内容:骨材、鉱物処理、金属精錬産業向けの装置・技術・サービスの提供
ウェブサイト:https://www.metso.com/
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