・従来比でシステム簡素化、2028年実用化目指す
荏原製作所は9月18日、開発中のロケットエンジン用電動ターボポンプについて、実際の燃料である液化天然ガス(LNG)と液体酸素(LOX)を使用した運転試験を完了し、製品の安定動作を確認したと発表した。
同社は2021年から宇宙事業に本格参入し、「人と宇宙のつながりを当たり前に」をミッションとして掲げている。今回の成果により、低コスト・高信頼性のロケットシステム実現に向けた技術開発が大幅に前進した。
従来システムの課題を解決
現在のロケットエンジンには、高温の高圧ガスでタービンを回転させ、そのタービンでポンプを駆動する方式が採用されている。しかし、この方式は高コストで構造が複雑、運用難度が高いという課題があった。
荏原が開発する電動ターボポンプは、バッテリー電力でモータを直接駆動する革新的な方式を採用。これにより、エンジンシステムの大幅な簡素化と容易な出力制御を実現する。
実液試験で安定動作を実証
今回の試験は6月17日から8月1日まで、荏原富津事業所で実施された。ロケット燃料として使用される液体メタンを多く含有するLNGと、酸化剤である液体酸素を実際に使用し、定格回転数時の性能と健全性を確認した。
試験では目標回転速度の達成、計画データの測定が順調に行われ、ポンプの異常振動や実液の漏洩も発生しなかった。これにより、実液環境下での製品の安定動作が実証された。
なお、同社は2024年9月に実液と性質が近い液体窒素による性能試験も完了しており、段階的な検証を経て今回の実液試験成功に至った。
2028年実用化目指し開発加速
荏原は今後、2028年の実用化を目標に詳細設計と試験を継続する。電動ターボポンプのロケットエンジン搭載により、従来比でエンジンシステムの簡素化、信頼性向上、精密な出力制御が可能となり、宇宙輸送のコスト削減と利便性向上が期待される。
同社の宇宙事業参入は、産業用ポンプで培った流体技術を活用した新分野展開の一環。宇宙産業の拡大に伴い、信頼性の高い推進システムの需要増加が見込まれる中、同社の技術優位性を活かした事業拡大が注目される。
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