ABB、米国製造拠点に1億1,000万ドルを追加投資

・データセンター・電力網向け需要増に対応、新技術「Emax 3」も米国内生産へ

スイス・チューリッヒ、電化・自動化分野のグローバルリーダーABBは、2025年中に米国製造拠点へ総額1億1,000万ドル(約161億円、146円換算)の追加投資を行うと発表した。データセンターや電力網など、電力需要の急増が見込まれる分野への対応を目的とし、先進的な電化ソリューションの研究開発・製造能力を強化する。

今回の投資は、バージニア州リッチモンド、プエルトリコ・アレシボ、ノースカロライナ州パイントップス、ミシシッピ州セナトビアの4拠点を対象とし、約200名の新規雇用創出が見込まれている。

■AI時代の電力需要に対応する「Emax 3」製造ラインを新設

セナトビア拠点には、最新型空気遮断器「Emax 3」の専用製造ラインを新設。Emax 3は、データセンターや空港、大規模製造施設など高負荷施設の電力系統において、エネルギーの安定供給とレジリエンスを高める次世代技術として注目されている。新ラインは2026年の稼働開始を予定しており、ABBの米国製造戦略「ローカル・フォー・ローカル」の象徴的プロジェクトとなる。

■リッチモンド拠点:試験センター・倉庫・組立ラインを倍増

バージニア州リッチモンドでは、3,000万ドルを投じて施設面積を倍増。新たに試験センター、倉庫、複数の組立ラインを設置し、電力品質・保護製品の生産能力を強化する。これら製品は、MRI装置やサーバー、製造ラインなど、重要インフラの電気障害からの保護に用いられる。2025年第4四半期の稼働開始を予定し、約100名の技術職・製造職が新規雇用される。

■アレシボ拠点:スマート遮断器など3ライン増設

プエルトリコ・アレシボでは、3,000万ドル超の投資により施設を拡張。スマート遮断器やスイッチングデバイスなど、米国市場向けの産業・商業用電力機器を製造する3つの新ラインを導入する。これらは電力分配・設備保護・エネルギー監視に不可欠なコンポーネントであり、2026年末までに90名の熟練技術者が新規採用される見込み。

■パイントップス拠点:低・中圧グリッド機器の需要増に対応

ノースカロライナ州パイントップスでは、3,500万ドルを投じて製造能力を増強。電力会社やデータセンター、産業施設向けに、先進的なセンサーやスイッチング・保護機器などの低・中圧グリッドコンポーネントの需要増に対応する。2026年の施設稼働を目指す。

■米国市場への継続的投資と成長戦略

ABBは2022〜2024年にかけて、米国事業に約5億ドル(約730億円)を投資。ウィスコンシン州ニューベルリンの製造・イノベーション拠点(1億ドル)や、ニューメキシコ州アルバカーキの新工場(4,000万ドル)などを開設してきた。2025年3月には、テネシー州セルマーとミシシッピ州セナトビアに計1億2,000万ドルの投資を発表。さらに同年8月には、テキサス州ダラスに地域配送センター(400万ドル)を開設するなど、米国市場への注力を強めている。

ABBの2024年米国売上は約90億ドルで、グループ全体の約27%を占める。米国内には約17,000名の従業員と、20州にわたる約40の製造・流通・運用拠点、9つの主要R&Dセンターを有し、全50州に事業展開している。現在、米国での売上の約75〜80%は米国内製造品によるものだ。

CEOのモーテン・ウィーロッド(Morten Wierod)氏は、「AIによる電力需要の急増、グリッドの近代化、エネルギー効率と稼働率の向上といった潮流が、米国市場の成長を牽引している。今回の投資は、北米全域の顧客ニーズに応えるための重要な一歩だ」と述べている。

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