・河北潟周辺の農業地域インフラ強化へ、総排水量は地域最大規模
荏原製作所は9月11日、農林水産省北陸農政局から石川県河北郡内灘町に新設される内灘排水機場向けの大型排水ポンプ設備5台を受注したと発表した。工期は2025年9月17日から2028年5月31日までの約2年8カ月間で、河北潟周辺地域では最大規模の総排水量を誇る排水機場となる見込み。
■背景には農業インフラの老朽化問題
今回のプロジェクトの背景には、石川県中央部の河北潟周辺農業地域が抱える深刻な課題がある。同地域は水稲を中心に大豆、大麦、野菜などの栽培が盛んな農業地帯だが、近年は農業水利施設の老朽化が進行。さらに地域の地盤沈下、都市化の進展、気候変動に伴う降雨形態の変化などの要因が重なり、地区内での湛水被害が頻発している状況にある。
新設される内灘排水機場は、これらの課題解決に向けた治水対策の中核施設として位置づけられ、地域農業の持続的発展を支える重要な社会インフラとなる。
■多様な口径に対応した立軸斜流ポンプを採用
受注した設備の詳細をみると、荏原は3種類の立軸斜流ポンプを組み合わせた構成を採用している。最小の800VMZ型(口径800mm、吐出量108m³/分、全揚程6.1m)を2台、中型の1500VZGM型(口径1500mm、吐出量260m³/分、全揚程5.8m)を2台、そして最大の1800VZGE型(口径1800mm、吐出量600m³/分、全揚程5.8m)を1台設置する計画。
これらのポンプは段階的な運転制御により、降雨量や河川水位の変動に応じた効率的な排水が可能となる。特に大口径の1800VZGE型ポンプは、集中豪雨時の大量排水に威力を発揮することが期待される。
■排水ポンプ分野でトップの実績を活かす
荏原製作所は雨水排水機場分野で国内トップクラスの納入実績を誇り、現在も全国各地で新設工事のほか、既設設備の更新・改造プロジェクトを多数手がけている。同社の排水ポンプ技術は、都市部の内水氾濫対策から農業地域の治水まで幅広い分野で採用されており、今回の大型プロジェクト受注は同社の技術力と信頼性を改めて示すものといえる。
■持続可能な社会づくりへの貢献を目指す
荏原製作所は長期ビジョン「E-Vision2030」において、地球環境に配慮した社会、安全・安心な社会インフラ、水や食料の安定供給といった要素を重視した持続可能な社会づくりへの貢献を掲げている。今回の内灘排水機場プロジェクトも、気候変動に対応した農業インフラ整備の一環として、同社のビジョン実現に向けた重要な取り組みと位置づけられる。
近年、全国各地で頻発する豪雨災害を背景に、排水インフラの重要性は一層高まっている。特に農業地域では、生産基盤の保護と安定した食料供給の確保が急務となっており、今回のような大規模排水機場の整備は今後も継続的に求められることが予想される。
<工事概要>
- 工事名:内灘排水機場ポンプ設備新設工事
- 発注者:農林水産省北陸農政局
- 施工場所:石川県河北郡内灘町湖西地内
- 工期:2025年9月17日~2028年5月31日
- 主要設備:立軸斜流ポンプ5台(800VMZ型×2台、1500VZGM型×2台、1800VZGE型×1台)