・AIサーバー市場拡大に対応、150億円の大規模投資で生産能力3倍を目指す―
日東紡(福島県福島市)は8月29日、取締役会にて、福島県福島市の福島事業センター内におけるガラスクロスの生産設備増強を決議したと発表した。増設は、半導体パッケージの高性能化に伴う需要拡大を受けたもので、150億円を投じて新工場棟(延床面積17,212㎡)を増築し、2026年度第4四半期の生産開始を予定している。
注目されるのは、AI技術の急激な進化により、AIサーバー向けの半導体基板に不可欠な低誘電ガラスクロス「Tガラスクロス」の需要が急増している点だ。2023年夏以降、同社の低誘電ガラスクロスがAIサーバー用チップ間高速通信スイッチのマザーボードに採用され始め、2024年からは複数チップ高密度実装技術の本格採用により、サブストレート基板大型化や熱膨張問題が顕在化。これに対し、日東紡のTガラスクロスは高い評価を受け、採用が飛躍的に拡大している。
今回の増設設備による増産能力は、全て最先端ロジックIC用途Tガラスクロスに振り向けた場合、現行の約3倍の生産が可能となる見込みであり、半導体市場の変革期に対応した戦略的投資と言える。加えて本計画は「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」による「供給確保計画」の認定を取得し、最大約24億円の助成金交付が予定されているほか、福島県の産業活性化企業立地促進補助金も受けている。
日東紡は2017年度より、台湾でのスペシャルガラス新工場建設や既存工場の設備転換による高付加価値品の生産能力強化を続けている。2024年度からの中期経営計画では4年間で800億円の設備投資を掲げており、今回の増設を含む多数案件の意思決定は早期に済ませている。市場の急激な成長を鑑み、必要に応じて柔軟かつ継続的な追加投資も視野に入れているという。
同社は今後も電子材料分野における「グローバル・ニッチNo.1」の地位確立を目指し、AIサーバー市場をはじめとした最先端半導体用途向けスペシャルガラスの拡充に取り組む。
<増築設備概要>
所在地:福島県福島市佐倉下一本杉20
生産品目:最先端ロジックIC用低熱膨張スペシャルガラスクロス(Tガラスクロス)
延床面積:増築分 17,212㎡(工場全体 67,568㎡)
構造・規模:鉄骨造 地上2階建
着工予定:2025年10月
竣工予定:2026年12月
AIサーバー分野の成長に伴う需要急増に応えるべく、大規模かつ国家安全保障の観点からも重要な認定を得て進む今回のプロジェクトは、日本の電子材料産業における競争力強化と地域経済活性化の両面で注目される事業となる。