・フュージョン(核融合)エネルギー発電の実現をサポート
日揮ホールディングスは9月2日、グループ会社である日揮が、米コモンウェルス・フュージョン・システムズ (以下、CFS社 :Commonwealth Fusion Systems LLC)への出資を行ったことを発表した。CFS社は、磁場閉じ込め方式(トカマク型)によるフュージョン(核融合)エネルギー発電炉の開発を進める米国の先進企業であり、世界初の商業用核融合炉「ARC(アーク)」の建設を米バージニア州で計画している。
今回の出資は、三井物産・三菱商事を中心とする日本企業12社によるコンソーシアムの一員として実施されたもので、国内EPC事業会社として豊富な実績を持つ日揮が、技術支援を通じてARCの実現に貢献する方針。
■国内唯一のトリチウム除去設備EPC実績を活用
日揮はこれまで、自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)および量子科学技術研究開発機構(QST)向けに、国内唯一のプラント規模トリチウム除去設備のEPCを担ってきた。今回のCFS社との協業では、これらの知見を活かし、ARCにおけるトリチウム除去設備の設計・建設支援を行う予定である。
さらに、ARCの発電所としての機能を最大化するため、日揮は炉周辺設備の統合設計、EPC、O&M(運転・保守)に関する技術支援も視野に入れている。特に、核融合熱を取り出すブランケットや熱交換設備など、従来の原子力・化学プラントで培った高温高圧条件下の設計・施工技術が活用される見込み。
■日本コンソーシアムによる知見獲得と国内展開
日本コンソーシアムは、CFS社の米国プロジェクトを通じて政策・規制対応、技術開発、建設・運転・保守に関する知見を獲得し、国内でのフュージョンエネルギー発電の商用化・産業化を目指す。これは、2024年に発表された日米共同パートナーシップに基づく取り組みであり、両国の技術連携と商業化への意志を象徴するものだ。
日揮グループは、CVCファンド「JGC MIRAI Innovation Fund」を通じて、京都フュージョニアリング株式会社やMiRESSO株式会社など、核融合関連スタートアップへの出資も進めており、技術ポートフォリオの拡充と次世代エネルギーへの対応を加速させている。
■脱炭素社会の実現へ、日揮の挑戦
核融合発電は、発電過程でCO₂を排出しない次世代エネルギーとして期待されているが、商用化には技術的課題が多く残されている。国内EPC事業の中核を担う日揮は、これまでの原子力・化学プラントでの経験を活かし、フュージョンエネルギーの実現に向けた技術統合力を提供することで、地球規模のエネルギー転換に貢献していく方針。