NHKの番組「プロジェクトX」が8月30日放送され、コマツ元社長・会長の坂根正弘氏が健在な姿を見せた。番組は、約30年前に誕生した建機遠隔管理システム「Komtrax」開発の舞台裏を描いたものだった。目立たぬ部門の技術者たちが災害復旧の現場を支えるために挑んだ“建機を止めない”システム開発は、当時のIT黎明期の困難を乗り越え、いまでは建設機械業界の基盤技術となっている。こうした歴史を背に、日本の建機業界は新たな転換点を迎えている。
■輸出依存から内需重視へ 2025年7月、米国が油圧ショベルやホイールローダーなどに15%の追加関税を課した。2024年の日本の建機出荷額は2兆9,437億円、その約7割を輸出が占める構造にあり、さらに、その3割を占める米国向け依存度の高さがリスクとして浮き彫りとなった。業界は欧州、東南アジア、インド、アフリカなど海外市場への展開を継続しながらも、災害復旧やインフラ更新といった国内需要を改めて重視し始めている。
国内市場は大きな伸びは見込みにくいが、安定した需要基盤を背景に、メーカー各社は性能競争から「人材確保」「社会的信頼重視」へと戦略をシフト。人材不足や環境対応といった課題を乗り越えるため、従来の製品訴求型から総合的価値訴求型へ移行している。
■技術革新が進める生産性革命
国土交通省が推進する「i-Construction」に対応したICT建機は、3Dデータによる高精度施工を可能にし、自動運転・遠隔操作・AI解析が普及。熟練人材不足に直面する中、自律走行ダンプや遠隔施工の進化は、効率化と安全性向上を同時に実現している。かつて「Komtrax」が遠隔監視を可能にしたように、いま業界は次の自動化・省人化フェーズへと踏み出している。
■SNSで採用とブランド強化 また、販促や採用活動の現場ではSNS活用が主流となりつつある。コマツは社長インタビュー動画や若手社員の仕事紹介をYouTubeやInstagramで発信、日立建機やコベルコ建機もSNSを通じて社会的価値や親しみやすさを訴求。さらに建機レンタル会社が高校生向け見学会を開催し、SNSと連動した情報発信により採用数を伸ばすなど、人材確保とブランド構築の両輪が進んでいる。採用と顧客訴求を分けて考える時代は終わり、情報発信が業界競争力の新たな柱となりつつある。
■「建設機械の日」を制定
こうした流れの中、日本建設機械工業会(建機工)は2025年5月、設立35周年を記念して「建設機械の日」を11月19日に制定した。社会的認知度を高め、若年層や一般消費者に建機の魅力を発信する狙いだ。CSPI-EXPO 2025では学生ツアーや特別ブースを設け、建機の技術と社会的役割を体感できる場を提供した。記念日の制定は、人材確保や業界イメージ刷新の一助として期待される。
■新たな転換点に立つ建機業界 追加関税という逆風、少子化による人材不足、環境対応など課題は多い。しかし業界は、かつて「Komtrax」を生み出した技術革新の精神を継承しつつ、内需強化や社会的価値の発信へと舵を切っている。11月19日の「建設機械の日」は、その決意を象徴する節目とも言える。
いま建設機械は、災害復旧やインフラ整備、環境対策など社会のあらゆる場面で期待を背負い、単なる機械を超えた存在へと歩みを進めている。
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