・EU関税優遇措置、欧州機械産業に深刻な打撃懸念
ドイツ機械工業連盟(VDMA):2025年8月29日
欧州委員会が進める米国製品への関税優遇措置について、ドイツ機械工業連盟(VDMA)対外経済部門のオリバー・リヒトベルク(Oliver Richtberg)部長が強い懸念を表明した。同部長は「米国製品の関税免除と引き換えに、欧州機械への懲罰的関税が拡大されることは、欧州産業の基盤を揺るがす深刻な問題」と指摘している。
■現状:EU機械輸出の3割が高関税対象
現在、EUから米国への機械輸出の約30%が、鉄鋼およびアルミニウム含有量に対して50%の懲罰的関税を課せられている状況にある。特に中堅企業にとって、複雑化する貿易手続きへの対応は経営を圧迫する要因となっている。
リヒトベルク部長は「対象製品リストが予告なしに拡大される現状では、企業の事業計画立案が困難を極めている」と実務面での課題を強調した。
■業界への影響と懸念
・雇用への打撃
同連盟では、現行の不均衡な関税政策が継続されれば、機械製造業における大幅な雇用削減は避けられないとの見通しを示している。
・競争力の著しい低下
米国市場において、欧州機械メーカーは価格競争力を大きく失い、市場シェアの急速な縮小が懸念される状況にある。
・政策転換への要求
VDMAは欧州委員会に対し、以下の点で緊急な政策見直しを求めている:
- 機械製造品の部門別関税からの恒久的除外
- 一方的な譲歩ではない、相互利益に基づく通商交渉の実現
- 中堅企業の実態を考慮した貿易手続きの簡素化
リヒトベルク部長は「現在の方向性は、ワシントンへの白紙委任に等しく、欧州の産業政策としては受け入れ難い」と厳しく批判している。
■今後の展望
機械工業界では、EU委員会の交渉姿勢の変化なくしては、欧州機械産業の国際競争力が長期的に大きく損なわれるとの危機感が高まっている。業界団体は加盟企業と連携し、政策転換に向けた働きかけを強化する方針を示している。
■ドイツ機械工業連盟(VDMA):欧州最大の機械工業団体
- 加盟企業数:3,600社以上
- 従業員数:約135万人(ドイツ国内)
- 年間売上高:約2,500億ユーロ(2024年)
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