農業機械大手の井関農機は、2025年12月期第2四半期(1-6月)決算で増収増益を達成した。売上高は前年同期比97億円増の1,008億円、営業利益は21億円増の43億円と大幅な上昇を記録した。国内市場の米価上昇と7月前の駆け込み需要が牽引し、農機製品の販売が大幅に伸長。海外では欧州が為替の影響で減収も、フランスでは堅調、英国はPTC社連結効果で現地通貨ベース続伸。北米は市場低迷続くも、アジアでは韓国・インドネシアで伸長した。8月20日発表した決算説明会資料の要点を拾ってみた。
■国内市場の現状と見通し
2024年後半より米価急騰が続き、農家の購買意欲が高まったことが井関農機の国内売上を押し上げる一因となった。値上げ前の駆け込み需要もあり第2四半期農機製品売上は前年同期比31%増となった。肥料・農薬価格高騰という逆風の中、米価は資材費高騰を上回る伸びを示し、2025年産米の高値維持など今後の市場環境も堅調に推移する見込みだ。政府による共同利用施設の支援策や農地集積、新農法・スマート農業推進などの政策も、農機需要の底堅さにつながっている。
■海外市場の現状と見通し
欧州では物価上昇一服と需要回復、在庫調整・資金繰り改善により販売増加が期待されている。連結子会社PTC社の収益貢献や商材ラインアップ拡充を軸とした事業展開も功を奏す。アジアでは韓国の大規模農業化、インドネシアの機械化政策による入札増が追い風に。北米ではコンパクトトラクタ市場の調整が続き、需要は減少傾向。しかしOEM供給を中心に事業を堅持し、関税影響も限定的との見通しだ。
■成長戦略・取り組み
「プロジェクトZ」を中心に短期集中の事業構造改革を推進し、2030年に向け成長分野への資源集中を加速。国内では大型機種・スマート農業・環境分野に重点を置き、新型アイガモロボ、自動化草刈機、景観整備事業等を拡大。欧州では、景観整備用乗用芝刈機の国内展開とBtoB・BtoG市場開拓を進め、2030年には草刈関連売上高100億円を目指す。また開発効率化、製品利益率向上、販社統合による営業力強化等を並行して推進。海外展開では、欧州市場の子会社連携強化、北米OEM供給、アジア現地調達拡大と地域最適化を進めている。
■今後の展望
第2四半期の業績好調を受けて、2025年通期予想は売上高1,755億円(当初予想比+50億円)、営業利益35億円(+9億円)へ上方修正。米価高騰に伴う購買意欲は年後半も続く見通しであり、構造改革と成長市場への注力が業績拡大を後押しする。井関農機は国内外市場で競争力・事業基盤の強化を進め、2030年以降の持続的成長を目指す構えだ。