・EU・米国間の貿易摩擦が機械・プラント業界を直撃、欧州に開放市場維持への結束求める
ドイツ機械工業連盟(VDMA):2025年8月21日
ドイツの機械・プラント工業が貿易政策の緊張により深刻な圧迫を受けている。ドイツ機械工業連盟(VDMA)が21日発表した統計によると、2025年上半期の機械輸出額は983億ユーロとなり、前年同期比3.4%減少した。価格変動を調整すると減少幅は4.9%に拡大する。
■米国向け輸出が大幅減、不確実性が世界に波及
第2四半期の輸出動向を詳しく見ると、4月に8.5%の大幅減少を記録した後、5月には1%減と小幅に持ち直したものの、6月は再び4.2%減となり、下降トレンドが継続している。
特に深刻な影響を受けているのが対米輸出で、第2四半期は前年同期比9.5%の大幅減となった。米国大統領による度重なる関税威嚇と、最終的な合意内容への不透明感が輸出企業の重荷となっている。
VDMA主席エコノミストのヨハネス・ゲルナント博士は「関税障壁と保護主義の高まりが、輸出主導型のドイツ機械工業に重くのしかかっている。我々欧州人は、世界的な繁栄の基盤である開放市場と信頼できる貿易ルールを強く支持しなければならない」と警鐘を鳴らした。
■主要市場で軒並み苦戦、分散化戦略に活路
米国以外の主要輸出市場でも厳しい状況が続いている。上半期の対中輸出は9.3%減、対フランス輸出は9.5%減と大幅に落ち込んだ。欧州諸国全体への輸出も3.7%減少している。
一方で、イタリア(1.4%増)とスペイン(3.5%増)は希望の光を示している。ゲルナント博士は「ここ数カ月のユーロ圏諸国からの受注増加は、この重要な販売地域への輸出にとって前向きな展開への希望を与えている」と述べた。
注目すべきは、従来輸出規模が小さかった地域での成長だ。メルコスール諸国向け輸出は上半期に12.3%増、中東向けは9.4%増を記録。これは企業がリスク分散のため市場戦略の多様化を図っている証左といえる。
■業界別動向:建設機械が最大の打撃
機械工業の大半の分野で輸出減少が見られた。建設機械・建材プラント分野は12.9%減、搬送技術分野は10.3%減と二桁減少を記録。駆動技術は4.9%減で低水準での安定、農業機械(5.2%減)と一般空調技術(3.8%減)は最近やや回復傾向にあるものの、依然として前年割れが続いている。
対照的に、食品・包装機械分野は6.3%増と好調を維持。継手類(0.3%増)、液体ポンプ(0.7%増)、プロセス工学機械・設備(0.8%増)も小幅ながら成長を記録した。
■政治への訴え:不確実性の軽減を
ゲルナント博士は政治指導者に向けて訴えた。「経済・政治の不確実性は近年高まる傾向にあり、米国との貿易紛争でその流れが加速している。現在の高い不確実性は非常に舵取りの困難な環境を生み出している。しかし企業は、欧州とドイツの事業立地としての競争力維持と市場シェア確保に不可欠な投資決定のため、計画の確実性を必要としている」
今後の展望について同博士は「7月末に交渉された関税合意を巡る新たな関税威嚇と継続的な不確実性により、この紛争の影響は第3四半期も引き続き感じられる可能性が高い」と予測している。
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