国際ロボット連盟、ヒューマノイドの展望をまとめた新報告書を発表

 国際ロボット連盟(IFR)は8月14日、ヒューマノイドロボットの現状と将来展望に関するポジショニングペーパー「Vision and Reality」を発表した。中国が量産目標を掲げ、米欧では巨額投資が進む中、ヒューマノイドをめぐるトレンドや可能性、課題を整理している。

 報告書でIFRの伊藤孝之会長は「人々の関心を集めているのは、家庭や職場、公共空間で働く未来型ヒューマノイドだ。我々の生活環境は人の体に最適化されているため、製造やサービスを支える汎用的な支援者への需要は明らかだ。ただし、大量普及がいつ起こるかは不透明で、既存のロボットを代替するのではなく、補完・拡張する形で役割を担うだろう」と述べた。

■地域別の動向
• 米国:NVIDIA、Amazon、TeslaなどがAIとロボティクスに積極投資。民間資金を背景に多数のスタートアップが誕生しており、物流や製造現場での生産性・効率向上を狙う実用志向の開発が中心となっている。
• 中国:国家戦略の中心に据え、顧客対応などサービス分野での活用を重視。製造業での自動化は二次的で、まずは基幹部品の供給網構築に注力している。
• 日本:ホンダの「ASIMO」(2000年発表)以来、ヒューマノイド開発の先駆け。PepperやPalroといった社会的ロボットが教育、商業施設、高齢者ケアに導入されている。高齢化社会のニーズを背景に、人と調和する存在として位置づけられ、川崎重工などが研究用プラットフォームとして開発を進めている。
• 欧州:倫理的側面を重視し、人と協働する産業用ロボットに注力。安全性・効率性の向上と人間能力の拡張を目指し、人間中心設計や社会的影響に重点を置いている。短中期的にはヒューマノイドの導入には慎重な姿勢が目立つ。

■今後の展望
 ヒューマノイドは人間に近い器用さと適応力を持ち、従来のプログラミング手法では困難だった複雑作業の自動化に適している。ただし、家庭用の汎用ロボットとして大規模に普及するのは当面先になると見込まれる。

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