川崎重工、世界初の商用規模液化水素貯蔵タンクの製作開始

 川崎重工業は8月7日、貯蔵容量50,000立方メートルを誇る地上式平底円筒形の液化水素貯蔵タンクの製作を、兵庫県加古郡の播磨工場で開始したと発表した。これは、高圧ガス保安法に基づく特定設備検査申請の設計審査を経て着工に至ったもので、液化水素の大規模かつ効率的な貯蔵を可能にする国内初、かつ世界でも前例のない取り組みとなる。

・播磨工場で着工、国内最大級の50,000㎥

 本タンクは、日本水素エネルギー株式会社(JSE)が幹事を務めるNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業「液化水素サプライチェーンの商用化実証」の一環として、神奈川県川崎市扇島の国内基地に設置される予定。

 液化水素は、CO₂を排出しないクリーンエネルギーとして期待されており、マイナス253℃という極低温での安全かつ効率的な貯蔵技術の確立と、インフラ整備が喫緊の課題となっている。川崎重工は今回、独自開発の構造・保冷システムを採用したことで、従来の真空断熱型地上式球形タンクに比べ、格段に多くの液化水素を貯蔵できるタンクの開発に成功。これにより、水素の商用供給体制の確立に大きく前進する。

 同社はこれまでにも、1980年代にNASDA(現JAXA)向けの540㎥球形タンクや、2020年に神戸空港島に建設された2,250㎥の国内最大級球形タンクなど、液化水素タンクの設計・製造で多数の実績を有している。加えて、長年にわたるLNG平底円筒形タンクの製造ノウハウも今回の新型タンクに活用された。

 今後はさらなる大型化を視野に、液化水素貯蔵タンクのラインナップ拡充を進めるとともに、関連する技術課題の解決を図りながら、水素サプライチェーンの確立を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく方針だ。

<地上式平底円筒形液化水素貯蔵タンクの概要>
項目/内容
タンク形式:平底円筒形貯槽
断熱方式:常圧断熱構造
液化水素貯蔵容量:50,000m3(約3,550トン)

 ニュースリリース