日立建機の25年度第1四半期決算説明会、先崎社長と塩嶋CFOの発言内容

 日立建機は7月30日、2026年3月期第1四半期決算説明会をオンライン開催した。先崎正文社長と塩嶋慶一郎CFOはともに、北米市場の関税政策が今後の業績に大きな不確実性をもたらしているとの認識を強調。一般建機およびマイニング機械の需要が共に減速傾向にあり、事業計画は慎重な前提に基づく保守的な見通しに修正された。ただし、価格転嫁や構造改革の継続により、利益率10%の維持とフリーキャッシュフローの確保を重視する姿勢を明確にした。以下、先崎社長と塩嶋CFOの発言要旨を紹介する。

■先崎正文社長の発言要旨

・業績概況と市場環境

 第1四半期は前年同期比で減収減益となった。アジアや欧州での販売は堅調だったものの、北米市況の低迷と円高が業績を下押しした。期初計画との比較では、日本やオセアニアの一般建機需要が想定を下回る水準で推移している。

・マイニング機械の需要動向

 マイニング分野では、顧客のメンテナンス計画が先送りされる傾向にある。これは部品サービスを含むマイニング事業全体に影響を与えている。しかし、マイニング機械の稼働時間自体は堅調に推移しており、今後の回復に一定の期待を持っている。この点は重要で、機械が動いている限り、メンテナンス需要は必ず戻ってくると考えられる。

・米州事業の状況

 注力事業である米州での独自展開事業は前年同期比で減収となったが、北米のリテールシェアは前年同期比で伸長している。厳しい市場環境の中でも、米州における事業基盤の強化は着実に進んでいると評価している。

・米国関税影響と通期見通し

 今回の業績予想で初めて米国関税の影響を織り込んだ。関税影響により、北米を中心に先行き不透明感が強まっており、一般建機の需要や販売をグローバルで最大限リスクとして考慮している。マイニング分野においても、足元の受注減少を反映している。

 関税によるコスト増については、販売価格の引き上げで一定程度吸収できる見込みだが、関税影響による先行き不透明感を需要や販売面で最大限計画に織り込んでいる。北米の代理店や顧客は依然として様子見の慎重な姿勢を崩しておらず、市場環境は不確実性の高い状況が続いている。

 また、関税の影響は北米にとどまらず、経済全体の減速という形で他地域にも波及し、グローバルな需要の下押し要因となる可能性があると見ている。このような不確実性を踏まえた慎重な前提を置いているが、調整後営業利益率は10%の維持を目指し、全社一丸となって取り組んでいく方針である。

・株主還元方針

 キャッシュフローは堅調に推移しており、株主還元強化の観点から、1株当たり年間配当予想175円を維持する。今後も安定的かつ継続的な株主還元に努めていく。

■ 塩嶋慶一郎CFO の発言要旨

・第1四半期業績詳細

 売上収益は米州での販売減や為替円高の影響により前年比7%減の1兆3,062億円となった。調整後営業利益は32%減の約221億円で利益率7.2%、親会社株主帰属当期利益は前年比54%減の113億円となった。米国関税政策への警戒感から北米を中心に一般建機の市況が悪化し、マイニングのメンテナンス需要も先送り傾向にあった。

・油圧ショベル需要見通し

 2025年度の油圧ショベル世界需要見通しを前回4月の見通しからさらに8,000台減少の19万8,000台に修正した。前年比では10%の減少を見込む。米国関税影響を踏まえ、北米を中心に先行き不透明感が強まっており、日本、西欧をはじめグローバルでの需要減を見込んでいる。

・マイニング機械需要動向

 2024年度は資源価格の下落、インド・インドネシアでの選挙影響などで需要が減少したが、中国のショベル、北米のトラックが増加し、全体では前年並みとなった。2025年度は資源価格が低調に推移し、米国関税政策、中国経済の鈍化など不透明な要素が多く、資源需要に影響を与えることから、マイニング機械需要も対前年10%から15%程度減少すると予想している。

 当四半期のマイニング売上収益は634億円と前年比12%の減収だった。為替円高影響を除く現地通貨ベースでは4%の減収と分析している。本体売上では、トラックが前年度でのアフリカ、中南米の大口納入案件の反動で前年比15%の減収、ショベルも9%の減収となった。部品サービスも豪州、アジアでのメンテナンス先送り傾向により12%の減収となった。

・米国関税影響の詳細

 関税実施による影響額として、コストとして86億円の原価増を織り込んだ。当初は本年度に日本から米国向けに出荷する対象製品の追加課税総額として300億円程度と想定していたが、追加税額の実質や税率変更、関税未適用の現地在庫販売も踏まえ、今年度に反映すべき原価増を86億円と再計算した。

 一方、86億円の原価増に対しては、6月より実施済みの販売価格引き上げで23億円相当の吸収を行った。今後も段階的な販売価格引き上げを検討しているが、今回の予想には織り込んでいない。販売価格転嫁に並行して、レンタルビジネス強化、原価低減等の対応策も継続することで、インパクトの極小化を図っていく。

・通期業績予想

 今年度の業績予想は、売上収益1兆3,000億円、調整後営業利益1,300億円、親会社株主帰属当期利益730億円に下方修正した。調整後営業利益率は10%に修正している。米国関税政策の影響として、関税コストの増加と一般建機需要の販売減もリスクとして反映した。

 マイニング売上収益は前年比5%減収の2,701億円を見込む。為替円高影響を除いた現地通貨ベースでは前年同等レベルだが、4月時の見通しより160億円の減収修正となる。機械本体はトラックとショベル合計で前年比9%の減収、部品・サービスでも3%減収を見込んでいる。

 年間配当予想は1株当たり175円を維持し、変更はない。関税政策に関する市場の警戒感は根強く、一般建機の需要・販売をグローバルで最大限リスクとして勘案した慎重な見通しとなっている。​​​​​​​​​​​​​​​​

 日立建機の2026年3月期第1四半期決算説明会