・水素発電機「HyFlex」でバッテリーショベルに電力供給
日立エナジーは7月28日、オランダ・ロッテルダムで、ゼロエミッションの建設現場を実現する実証プロジェクトを実施したと発表した。ディーゼル発電機の代替として、同社の燃料電池式水素発電機「HyFlex™」が導入され、日立建機製のバッテリー駆動ショベル「ZE135」への電力供給を行った。水素供給は世界最大手のエア・プロダクツが担い、持続可能な建設ソリューションを展開するデュラ・フェルミーアと共同での取り組みとなった。
この実証は、建設業界の脱炭素化を後押しするもので、建設業が世界のエネルギー関連CO₂排出の3分の1以上を占めるという背景を踏まえたもの。欧州連合(EU)やオスロ市、オランダなどが先行して導入しているゼロエミッション関連政策・規制を踏まえ、建設現場でのクリーンエネルギーの導入加速を見据えている。
HyFlexは、水素を用いて電力、熱、水を生成する燃焼レスの電源ソリューション。排出ガスや騒音が発生しないため、都市部や環境規制の厳しい現場にも適しており、500kAモデルで年間最大800トンのディーゼル燃料を削減し、約2,900トンのCO₂排出抑制が可能とされる。
日立エナジーのマルコ・ベラルディ氏(系統・電力品質ソリューションおよびサービス部門責任者)は、「今回のHyFlex導入は、異業種連携による脱炭素建設の重要なステップ。私たちはエネルギーエコシステム全体が一丸となって持続可能な未来を目指す必要があると考えている」とコメント。
また、エア・プロダクツのキャロライン・スタンセル氏(欧州・アフリカ地域マーケティング・成長戦略担当役員)は、「水素による脱炭素化が難しいとされる建設分野でも、現場レベルで機能することが実証された」と成果を強調した。
今回のプロジェクトでは、日立建機のバッテリー式ショベルも注目を集めており、水素電源との組み合わせにより完全なゼロエミッション運用が可能となる。こうした取り組みは、騒音や環境負荷に敏感な地域、鉱山、医療施設、データセンターなど、幅広い分野への応用が見込まれる。
日立エナジーは今後、HyFlexを中心とする「Hydrogen-to-Power」や、電解装置向けの「Power-to-Hydrogen」など、水素の利用価値を最大化する包括的なソリューションを展開し、ギガワット級の水素エコシステム構築への貢献を目指す。スウェーデンではすでに、HyFlexを港湾での停泊船舶に電力供給する試みも進めている。
ゼロエミッション建設への挑戦は、新たな産業連携と技術革新を通じて、持続可能な社会への移行を後押しするものとなる。
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