コマツが7月29日に発表した2026年3月期の第1四半期(25年4~6月)業績によると、連結売上高は9,095億円(前年同期比5.2%減少)となった。建設機械・車両部門では、販売価格の改善に努めたものの、前年同期に比べて円高となった影響や販売量の減少により、売上高は前年同期を下回った。産業機械他部門では、半導体産業向けエキシマレーザー関連事業でのメンテナンス売上げや工作機械の販売が増加したものの、鍛圧機械の販売減少などにより、売上高は前年同期を下回った。
利益については、建設機械・車両部門で販売価格の改善に努めたものの、円高やコスト増の影響、販売量の減少などにより減益となった。リテールファイナンス部門と産業機械他部門では増益となった。この結果、営業利益は1,404億円(前年同期比10.6%減少)となった。売上高営業利益率は前年同期を1.0ポイント下回る15.4%、税引前四半期純利益は1,313億円(前年同期比12.8%減少)、当社株主に帰属する四半期純利益は912億円(前年同期比16.9%減少)となった。
コマツは、2025年4月より2028年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画「Driving value with ambition 価値創造への挑戦」をスタートした。成長戦略の3本柱として、①イノベーションによる価値共創、②成長性と収益性の追求、③経営基盤の革新 を掲げ、ありたい姿として再定義した「安全で生産性の高いクリーンな現場を実現するソリューションパートナー」を目指し、モノ価値およびコト価値の一層の進化に向けて活動を進めている。
◾️米関税影響は慎重に分析、第1四半期の世界需要は前年同期比3%減
米国政府が2025年春以降に段階的に導入した鉄鋼・アルミなどへの追加関税措置について、コマツは業績への影響を慎重に分析している。7月時点での最新の試算によると、関税コストは4月時点の想定より支払いベースで約300億円、損益ベースで約35億円の負担減となる見通し。これは、米国内在庫の調整などにより輸入実績が減少したことが主因とされている。ただし、関税率自体は全体的に上昇傾向にあり、特に鉄鋼・アルミ製品については、6月から全世界に対して50%の関税が課されることとなり、当初想定より負担が重くなる領域もある。関税による需要への直接的な影響は現時点で見られていないが、北米市場における不透明要因として引き続き注視されている。
主要7建機(鉱山機械を含む)の2025年度第1四半期の世界需要台数は、前年同期比3%の減少。通期見通しは4月時点から変更していない。北米では需要が同4%減となったが、代理店在庫は適正水準まで調整が完了。レンタル向けには減速傾向も見られる。欧州でも3%減となったが、ECBの利下げや各国の財政政策により、景況感には下げ止まりの兆しがあるという。東南アジアでは同7%増と堅調で、特にインドネシアでは大統領選後の需要回復が寄与。一方、日本市場では16%減と大幅に落ち込み、レンタル稼働の低迷や人手不足が需要の押し下げ要因となった。
また、鉱山機械は、北米での需要減が影響し、第1四半期の売上高は前年同期比8%減の4,063億円(為替影響を除くと2%減)となった。インドネシアの石炭価格下落など不安要素はあるものの、全体としては堅調に推移している。通期売上高は前年比10%減の1兆7,279億円(為替除き2%増)を見込んでおり、変更はない。
建設機械・車両部門の部品売上高は、同8%減の2,419億円。アフターマーケットの売上比率は54%となったが、為替の影響を除くと1%の増収。通期では部品売上高が6%減の9,870億円、アフターマーケット全体では4%増を見込む。
関税政策や市場の不透明感が続く中でも、コマツは現時点で業績見通しを据え置き、各市場の動向を注視していく。特に、今年度通期ではインドネシアと日本が懸念される市場だとされる。
■部門別の概況
[建設機械・車両]
建設機械・車両部門の売上高は8,449億円(前年同期比5.5%減少)、セグメント利益は1,223億円(前年同期比14.1%減少)となった。
建設現場向け施工管理ソリューションのスマートコンストラクションⓇの累計導入現場数は2025年6月末時点で49,223現場に達した。鉱山機械では、無人ダンプトラック運行システム(AHS)の累計導入台数が本年6月末時点で896台となった。
2025年6月、カナダのBarrick社とパキスタンにおけるレコディク銅・金鉱開発プロジェクト向けに、総額4億4,000万ドル規模の鉱山機械を2026年度から提供する契約を締結した。本プロジェクトの支援のため、現地法人としてKOMATSU PAKISTAN MINING (SMC-PRIVATE) LIMITEDを設立する。コマツ中近東(株)も部品補給体制強化に向けた投資を行う予定。また、新たに開発した世界最大の超大型油圧ショベルPC9000をSuncor社のフォートヒルズ鉱山(カナダ アルバータ州)に6月に導入した。
■地域別の概況
<米州>
北米では、関税政策による需要への影響は明確には見られなかったものの、鉱山機械の需要が減少したことや円高の影響などにより、売上高は前年同期比で14.6%減少した。
中南米では、銅需要が堅調に推移したことなどにより、チリで鉱山機械の部品・サービスの販売が増加したものの、円高の影響により、売上高は前年同期比で5.3%減少した。
<欧州・アフリカ・中近東>
欧州では、需要の下げ止まりの兆しがみられ、さらに前年度からの代理店の在庫調整が進んだことや販売価格の改善により、売上高は前年同期比で9.5%増加した。
アフリカでは、鉱山機械の部品・サービスの販売が増加したことにより、売上高は前年同期比で1.7%増加した。
中近東では、UAEでの大型インフラプロジェクトなどにより需要が増加し、売上高は前年同期比で9.7%増加した。
<オセアニア・アジア・CIS>
オセアニアでは、鉱山機械の販売は堅調なものの、円高の影響により、売上高は前年同期比で6.8%減少した。アジアでは、最大市場のインドネシアにおいて、石炭価格の下落やインフラ予算の削減などによる需要減少の影響が現れ始めているものの、前年同期は大統領選挙やラマダンの影響を受け需要が低迷したことから、売上高は前年同期比で2.0%増加した。中国では、不動産市況が引き続き低迷していることから、売上高は前年同期比で19.3%減少した。CISでは、中央アジアにおいて需要および販売が堅調に推移したものの、円高の影響により、売上高は前年同期比で7.6%減少した。
<日本>
日本では、低調なレンタル向け需要が継続していることに加え、一般向け需要も減少したことから、売上高は前年同期比で3.3%減少した。
[リテールファイナンス]
リテールファイナンス部門では、金利収入が増加したものの、円高の影響により、売上高は前年同期並みの304億円(前年同期比0.1%減少)となった。セグメント利益は主に資金調達コストの低下により、94億円(前年同期比22.5%増加)となった。
[産業機械他]
産業機械他部門では、半導体産業向けエキシマレーザー関連事業でのメンテナンス売上げや工作機械の販売が増加した。一方で、鍛圧機械の販売減少などにより、売上高は435億円(前年同期比4.6%減少)、セグメント利益は72億円(前年同期比43.5%増加)となった。
■連結業績予想に関する定性的情報
2026年3月期の連結業績は、以下のとおり減収減益となる見通しで、2025年4月28日に公表値(下記)を据え置いている。
売上高3兆7,450億円(前期比8.8%減)、営業利益4,780億円(同27.3%減)、税引前当期純利益4,420億円(同26.9%減)、株主に帰属する当期純利益3,090億円(同29.7%減)。
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