中国油圧・空気圧・シール部品工業会、日本を訪問

・フルードパワー分野で日中の連携強化へ ― 日本フルードパワー工業会、SMC、川崎重工を視察

 中国の油圧空気圧シール業界を代表する団体である「中国油圧・空気圧・シール部品工業会(CHPSA)」の代表団が2025年7月、日本を訪問し、日本フルードパワー工業会(JFPA)、SMC川崎重工業の3機関・企業を視察した。今回の訪問は、日本側の招請によるもので、産業界の最前線に触れながら、日中間の技術交流と協力深化を目的としたもの。日中の工業会に詳しい関係者によると、JFPAの招請による代表団の正式訪日は2005年8月以来、20年ぶりといわれる。

 代表団には、CHPSA副理事長の劉偉林氏、事務局長の趙曼林氏らが参加。視察の中では、精密空気圧機器や革新的な油圧技術、グリーン製造、水素エネルギーといった先端分野に焦点を当てた意見交換が行われ、両国の協調的な産業発展に向けた長期的な対話の枠組みづくりにも寄与した。

■日本フルードパワー工業会との対話:産業界の交流深化

 訪日の初日である7月8日、代表団は東京・日本フルードパワー工業会を訪問。専務理事の藤原達也氏、専門要員(スペシャリスト)の大熊正博氏らの出迎えを受け、日中それぞれの業界動向や市場課題、工業会の役割などについて率直な意見交換を行った。

 JFPAは1956年設立。1999年に空気圧工業会と合併し、現在は約120社の会員を擁する。現会長はKYBの川瀬正裕氏。今回の会談は、単なる交流にとどまらず、将来を見据えた実務的な協力体制の構築に向けた第一歩ともなった。

 ニュースリリース(日本フルードパワー工業会訪問)

■SMC視察:インテリジェント製造とグリーン生産を体感

 7月9日には、世界的空気圧機器メーカーであるSMCの東京本社、茨城R&Dセンター(建設中)、下妻工場を視察。太田昌宏取締役の案内で、同社のグローバル戦略、特に中国市場における展開や今後の成長戦略について説明を受けた。

 建設中の茨城R&Dセンターは約1,000人を収容可能な全開放型の研究施設で、視察時にはセンター長の土居義忠氏と中国支援部の李文燕氏によるプレゼンテーションも行われた。

 さらに訪問団は「未来の工場」と称される下妻工場も視察。榎本亮工場長の案内のもと、インテリジェント生産ラインやAIによるエネルギー最適化システムなど、最先端のグリーン製造技術が紹介された。

 視察後、趙事務局長は「SMCの実践は中国企業の構造転換とインテリジェント化への有力な参考になる」と述べた。

 ニュースリリース(SMC訪問)

■川崎重工視察:精密機械・水素技術など先端領域で交流

 7月11日には神戸を訪れ、川崎重工業の本社、精密機械製造工場、ロボット生産ライン、そして川崎博物館を視察。精密機械・ロボットカンパニー 精密機械ディビジョン長の丸居英夫執行役員や川崎精密機械商貿(上海)有限公司の陳愛明董事長らが応対した。

 精密機械工場では、油圧バルブやピストンポンプの自動生産体制を視察。100台以上のロボットで構成される自動車向けスポット・ワイヤ溶接ラインでは、高度なインテリジェント溶接技術が披露された。

 また、川崎博物館では、造船から始まり、航空宇宙、ロボット、水素エネルギーへと展開してきた川崎の技術史が紹介され、訪問団に強い印象を与えた。趙事務局長は「川崎の革新的アプローチは中国の製造業のデジタル転換に合致しており、今後の協力が楽しみだ」と語った。

■日中産業界の信頼深化、連携の新たなステージへ

 今回の一連の視察を通じて、CHPSA代表団は日本の産業界との深い対話と先端技術への理解を深めた。藤原専務理事、太田取締役、丸居執行役らの積極的な受け入れと意見交換により、両国のフルードパワー産業の持続的発展に向けた連携の基盤が固まった。

 CHPSAは、今後も日中の産業協力や国際連携の推進に取り組む方針であり、今回の訪問がその新たな起点となった。

 ニュースリリース(川崎重工業訪問)