JX金属(東京都港区)は7月23日、光通信分野で需要が高まる化合物半導体材料「インジウムリン(InP)基板」の生産能力を約2割引き上げる設備投資を行うと発表した。投資額は約15億円で、茨城県北茨城市の磯原工場にて製造工程の一部を増強する。新設備の稼働は2026年度を予定している。
InP基板は、光通信の受発光素子や産業用センサなどに用いられる高機能材料で、特に高速・大容量のデータ通信が求められる分野で不可欠な存在となっている。JX金属は40年以上にわたって同材料を手がけており、世界でも数少ない製造サプライヤーの一社として高いシェアと技術力を有する。
近年は、生成AIの発展に伴い、ハイパースケールデータセンターの建設が世界的に進んでおり、こうした施設内でのデータ通信手段として光通信の採用が広がっている。これにより、InP基板の需要も急増。JX金属では、こうした足元の旺盛な需要に対応するとともに、将来を見据えた追加投資も検討していく。
また同社では、2040年を見据えた長期ビジョンの中で、半導体材料や情報通信材料といった「フォーカス事業」を成長の中核と位置づけており、InP基板は次世代の収益柱として期待されている。
光通信分野にとどまらず、今後は次世代通信、自動運転、医療、エンタメなどリアルタイム処理が求められる領域でも活用が広がる見通し。InP基板は、電気と光の長所を融合させる「光電融合技術」の主要材料としても注目されており、エネルギー効率の高い次世代情報通信インフラの構築にも貢献するとみられる。
なお、今回の投資による2026年3月期の連結業績への影響は軽微としている。
<設備投資の概要>
内容:磯原工場(茨城県北茨城市)におけるInP基板製造工程の一部増強
投資額:約15億円
生産能力:2025年比で約2割増
稼働開始:2026年度(予定)
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