アトラスコプコ、25年4〜6月売上は8%減の41,210 MSEK(約6,182億円)、通期見通しは「現状維持」

 Atlas Copco Group(アトラスコプコグループ) :2025年7月18日

 (比較数値は、特に記載がない限り、前年との比較。1クローナは約15円、MSEKは百万ローナ)

■2025年4〜6月期は減収減益
 受注高は 40,087 MSEK(以下、前年同期43,654)で8%減、売上高も 41,210 MSEK(44,803)と8%減となった。為替の逆風が影響したほか、実質ベースでもそれぞれ1%、2%の減少となった。営業利益は 8,493 MSEK(9,466)で、営業利益率は20.6%(21.1)とやや後退。比較可能項目を除いた調整後営業利益は 8,411 MSEK(9,785)で、利益率は20.4%(21.8)だった。税引前利益は 8,407 MSEK(9,274)、1株当たり利益(EPS)は 1.34 SEK (1.57)に減少。営業キャッシュフローも 6,114 MSEK(6,861)にとどまった。資本利益率(ROCE)は26%(29)と引き続き高水準を維持している。

 アトラスコプコ2025年第2四半期データ

■第2四半期の市場動向
 アトラスコプコグループの製品およびサービスに対する全体的な需要は、前年と比較して比較的安定していたが、主に為替の影響により、受注は減少した。機器の需要はまちまちだった。産業用コンプレッサの受注量は減少し、ガスおよびプロセス用コンプレッサの受注量は前年の高水準に比べて大幅に減少した。半導体およびフラットパネル業界向けの真空装置の受注量は若干減少したが、産業用および科学用真空装置の受注量は増加した。産業用組立装置およびビジョンソリューションの需要はほぼ横ばいだった。ポータブルコンプレッサ、発電機、産業用ポンプなどの製品の受注が増加し、あらゆる種類の動力機器で堅調な受注増を達成した。特殊レンタル事業を含むサービス全体の需要は、すべての地域で受注量の増加に伴い増加した。前四半期比では、受注は有機的に減少し、さらに為替の悪影響も加わり、前四半期と比較してグループの受注が減少した。

 同社は今後の見通しについて、「世界経済の先行きは依然不透明であるものの、顧客活動は現在の水準で推移する見込み」としている。なお、前回4月の見通しでは「顧客活動はやや減速する可能性がある」としており、今回、やや前向きなトーンに修正された形だ。

 アトラスコプコ2025年第2四半期データ

■2025年上期は減収減益、為替影響が逆風に
 2025年上期(1~6月)の連結業績を発表した。受注高は86,691MSEK(89,310、前年同期比3%減)となり、為替のマイナス4%影響を差し引いた有機的減少は1%だった。収益(売上高)は83,940MSEK(87,678、同4%減)で、有機的には2%の減少となった。
 営業利益は17,098MSEK(18,811、同9%減)、営業利益率は20.4%(21.5)だった。比較可能項目を除いた調整後の営業利益率は20.6%(22.0)となり、為替影響によるマイナスが1,230MSEKあった。
税引前利益は16,877MSEK(18,635)、税引前利益率は20.1%(21.3)。当期純利益は13,123MSEK(14,820)だった。1株当たり利益は基本・希薄化後ともに2.69SEK(3.04)。
 設備投資や買収・配当を除いた営業キャッシュフローは12,689MSEK(13,521)となった。

 アトラスコプコグループの社長兼CEOであるヴァグナー・レゴ氏は、第2四半期の報告書について次のようにコメントした。
 「マクロ経済環境は四半期を通して不透明な状況が続きました。しかしながら、アトラスコプコグループの製品とサービスに対する全体的な需要は、前年と比較して比較的安定していました。特殊レンタル事業を含むサービス全体の需要は、全地域で受注量の増加に伴い増加しました。」

■部門別状況(第2四半期)
<Compressor Technique>(圧縮機技術)
 売上高は前年同期比5%減の19,119 MSEK(20,136)となった。オーガニック成長率は2%増だったものの、為替影響やM&Aによる希薄化が収益を圧迫した。営業利益は4%減の4,776 MSEK(4,990)で、営業利益率は25.0%(24.8)を維持した。過去12カ月の資本利益率(ROCE)は82%(84)。

・産業用コンプレッサは大型機の減速が影響
 産業用コンプレッサの受注は、一部地域での需要減退によりオーガニックベースで減少した。特に大型機種での減少が目立ち、小型から中型機では比較的堅調だった。地域別では、アジアで前年割れとなり、欧州では前年並み、米州では増加した。

・ガス・プロセス用コンプレッサは大幅減
 ガスおよびプロセス用コンプレッサの受注は前年の高水準から大きく減少。複数の顧客セグメントで需要が減退した。前四半期(1-3月期)と比較しても受注は減少しており、地域別ではアジア、欧州、北米で落ち込み、アフリカ・中東地域のみ増加した。

・サービス事業は欧州中心に堅調
 一方、サービス需要は引き続き増加し、特に欧州での伸びが顕著だった。

・新フィルター製品を投入 化学・食品向けに展開
 イノベーションでは、化学・食品業界をターゲットとした新型膜フィルター「SME+」を投入。液体中の粒子や微生物を効果的に除去することで、製造プロセスの品質向上に貢献する。用途としては、液体中の粒子除去、バイオバーデン(微生物負荷)制御、滅菌処理、飲料用液体の製造などが想定されている。

・M&Aを積極展開、米韓で3社買収
 同四半期には以下の3件の買収を完了した:
• 米国の圧縮空気ディストリビューター「Powered Compressors and Supplies」(従業員12人)
• 米国「Air Mac Inc.」の圧縮空気事業部門(従業員40人、2024年売上約184 MSEK)
• 韓国のコンプレッサメーカー「Kyungwon Machinery Industry Co., Ltd.」(従業員126人、2024年売上約465 MSEK)

 アトラス・コプコは、サービス事業の強化と新製品投入、M&Aによる事業拡大を通じ、世界各地でのプレゼンス拡大と収益力維持を図っている。

<Vacuum Technique>(真空技術)

・第2四半期は減収減益、アジアでの受注が下支え
 真空技術部門は、機器需要が横ばいにとどまった一方、サービス事業は堅調に拡大した。営業利益率は前年同期比で低下し、18.9%となった。

・半導体・フラットパネルディスプレイ向け
 半導体およびフラットパネルディスプレイ業界向けの真空装置の受注は、北米での需要減退を背景に、前年同期比でやや減少した。ただし、アジア市場では注文が増加し、前四半期比では回復基調を示した。地域別では、アジアで前年を上回ったが、欧州と北米では減少している。

・売上・利益
 売上高は11%減の8,982 MSEK(10,089)で、有機的な減少幅は5%だった。営業利益は16%減の1,700 MSEK(2,027)に落ち込んだ。なお、前年同期には-143 MSEKの構造改革費用が含まれていた。
営業利益率は18.9%(20.1、調整後:21.5)で、為替のマイナス効果と売上減少が利益率を押し下げた。一方、調達改革や構造改革に伴うコスト削減が利益率を一部補った。過去12か月の資本利益率(ROCE)は18%(21)だった。

・産業・科学分野向け
 産業および科学用途向けの真空装置は、一般産業と科学用途の両分野からの需要増により、受注が前年同期比で増加。前四半期比では横ばいだったが、地域別では多くの市場でプラスとなった。

・サービス事業
 サービス分野は引き続き堅調で、半導体・産業分野の顧客からの需要が主要地域で拡大。これによりサービス関連の受注は前年同期比で増加した。

・技術開発
 新たに、電子機器や一般産業向けの油回転式スクリューポンプ「GHS 2700–3400 VSD+」を発売。小型・高効率・低騒音に加え、インテリジェントな接続・制御機能を備えており、顧客の生産プロセスを支援する。

<Industrial Technique>(産業技術)

・通期で減収減益 為替が重荷
 インダストリアルテクニーク(産業技術)部門の業績は為替の影響を大きく受け、減収減益となった。同部門の売上高は前年比18%減産業の6,118 MSEK(7,471)となり、有機的な減収率は12%。営業利益は同33%減の1,047 MSEK(1,557)にとどまり、営業利益率は17.1%(20.8)と大きく低下した。為替のマイナス効果が主因とされており、一方で販売数量、価格、製品構成の組み合わせは利益率を押し上げる要因となった。資本利益率(過去12カ月)は18%(22)に低下した。

・自動車業界向け:地域差ありも全体は安定
 自動車業界向けの産業用組立・画像処理ソリューションの需要は、前年比で概ね横ばいと安定して推移した。ただし、為替の影響で受注額は大幅に減少。前期比では有機的な受注量も減少した。一方、地域別に見ると、アメリカでは前年を上回ったが、欧州とアジアでは減少した。

・一般産業向け:エレクトロニクスが下支え
 一般産業向けでは、電動工具、組立機器、画像処理ソリューションへの需要は全体として前年並みだった。特にエレクトロニクス業界の活動拡大が需要を支えた一方、他の複数の顧客セグメントでは前年を下回った。為替のマイナス影響により受注総額は減少し、前期比では受注量に大きな変化はなかった。地域別ではアジアと南米で前年を上回ったが、欧州と北米では減少した。
インダストリアルテクニーク部門は、グローバル市場における通貨変動に加え、地域ごとの需要変化の影響を受けた形となった。

<Power Technique>(パワー技術)

・機器需要が堅調 営業利益率は17.1%
 機器需要の拡大とレンタル事業の成長を背景に、引き続き堅調な業績を示した。

・機器需要、北米・欧州で堅調
 パワー機器の需要は堅調で、可搬式コンプレッサーや発電機、産業用ポンプといった主要製品群で広く受注が伸びた。特に北米と欧州での需要が全体の押し上げ要因となった。ただし、前四半期が高水準だった反動から、四半期ベースでは受注が減少した。一方、前年同期比では北米と欧州で増加し、アジアおよび南米では減少した。

・スペシャルティレンタルも拡大
 特殊用途向けレンタル事業(スペシャルティレンタル)の需要も増加傾向にあり、前年同期および前四半期と比較して受注がいずれも増加した。地域別では、北米と欧州で前年同期比増、アジアでは横ばいだった。

・サービス需要は横ばい、乾燥機の新製品も投入
 サービス関連の受注は前年同期比でほぼ横ばいだったものの、前四半期比では増加した。また、ポータブル乾燥機の新製品「CDR」「CDR+」を市場投入。パイプラインやレンタル用途、過酷な産業環境での使用を想定して設計されており、圧縮空気中の過剰な湿気を効率的に除去することで、腐食や機器故障の防止に貢献する。

・M&Aによる事業拡大も継続
 同四半期中に以下の買収を完了した:
• ドイツの可搬式ポンプ販売・サービス会社 Heide Pumpen GmbH(従業員数42名)
• オーストラリアの水処理レンタル会社 Clearpro Construction Water Solutions Pty Ltd.(従業員数12名、2024年の売上は約MSEK 42)

・売上・利益は減少も利益率は堅持
 売上高は7,196 MSEK(7,391 )で、為替の影響などにより有機的には1%の減少となった。営業利益は1,227 MSEK(1,406)で13%減、営業利益率は17.1%(19.0)となった。利益率の低下は主に、為替のマイナス影響、販売構成の悪化、売上に対する機能コストの上昇が要因とされている。過去12カ月の投下資本利益率(ROCE)は16%(20)だった。

■Atlas Copco Group(アトラスコプコグループ)について:
 アトラス・コプコグループは、未来を切り拓く技術革新を掲げ、顧客の成功を支える製品・サービス・ソリューションを提供。主な事業分野は、圧縮空気・真空ソリューション、エネルギー機器、排水・産業用ポンプ、電動工具および組立・マシンビジョンソリューション。2024年のグループ売上高はBSEK 177、従業員数は約55,000人(2024年末時点)。ウェブサイト:www.atlascopcogroup.com

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