・建設資材業界で初、採石場への自律運搬システム導入の成功を証明
2025年7月14日、米キャタピラー(Caterpillar)と、米国最大の家族経営型砕石・砂利メーカーであるラック・ストーン社(Luck Stone)は、両社が共同で推進してきた自律運搬プロジェクトにおいて、累計100万トンの資材を無人ダンプトラックによって運搬するという節目を達成したと発表した。運搬実績の舞台となったのは、バージニア州シャンティリーにあるラック・ストーンの「ブルラン採石場(Bull Run Quarry)」で、これはキャタピラーにとって砕石業界で初めての快挙となる。
同社の自律運搬システム(Autonomous Haulage System:AHS)は、これまで主に鉱山向けに展開されてきたが、今回の実証により、採石場という異なる環境でも高い安全性と生産性を実現できることが証明された。キャタピラーのリソースインダストリー部門を統括するグループプレジデントのデニス・ジョンソン氏は、「ブルランでの100万トン運搬達成は、採石業界における自律化の未来を切り開くものであり、ラック・ストーンとの協業の成果に誇りを感じている」と述べた。
ラック・ストーンの社長兼CEOであるチャーリー・ラック氏は、「このプロジェクトは、当社の100年の歴史の中でも最も革新的な取り組みの一つ。運搬だけでなく、従業員の成長や職場のあり方にも新たな可能性をもたらしている」とコメント。運搬実績の達成には、訓練、鉱山計画、業務効率化などあらゆる部門が関与し、現場全体での取り組みが結実したという。
■自律技術導入の第一歩としてのブルラン採石場
今回の協業は、両社が共に掲げた「採石場オペレーションの未来像を変革する」というビジョンに基づきスタートしたもの。ブルラン採石場では、キャタピラーの自律走行技術を搭載した無人ダンプトラック「Cat® 777」が初めて導入され、専用のテクノロジースタックおよび現場統合サービスにより運用が行われている。
このプロジェクトでは、鉱山とは異なる採石場特有の環境下で、人・プロセス・技術がどのように自律運搬に適応できるかを検証。その成果として、稼働の一貫性やサイクルタイムの改善、無駄なアイドリングの削減、安全性の向上などが実証された。
■自動運転の効果と今後の展望
100万トンという運搬実績は、自律技術が単なる概念ではなく、実運用において再現性のある成果をもたらすことを意味する。特に以下の観点で、その価値が示されている:
• 労働力不足への対応:人手不足に悩む業界において、自律技術は代替手段となり得る。
• 安全性の向上:人をキャビンから降ろすことで、事故リスクを大幅に軽減。
• 燃料効率と環境配慮:最適な運転により、燃料消費と排出量を削減。
• 人材の再教育:オペレーターの役割が高度化し、従業員のスキル向上を促進。
今回の成果は、キャタピラーが掲げる「カスタマーバック(顧客起点)戦略」とも一致しており、ラック・ストーンから得られた現場の知見が、同社の自律運搬システムの改善にも大きく貢献している。
キャタピラーとラック・ストーンは今後、他の採石場や用途への自律技術の拡大を視野に、さらなる協業を続ける方針。ブルラン採石場での成功が、砕石業界全体の変革を促す先例となることが期待される。
なお、キャタピラーの自律運搬ソリューション「Cat MineStar™ Command」に関する詳細は、各地のキャタピラーディーラーまたは公式サイト(cat.com)まで。
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