・複合壁体による欧州初の堤防補強工事に圧入技術が貢献へ
技研製作所(高知市)の「インプラント工法™」が、オランダ政府が推進する大規模治水対策事業「デルタプログラム」の河川堤防補強工事に採択された。採択されたのは、ユトレヒト州のホランセ・アイセル川沿いに位置する「KIJKプロジェクト」区間で、施工開始は2025年9月を予定している。施工延長は約10kmに及び、鋼矢板と鋼管杭を組み合わせた複合壁体による欧州初の堤防強化工事となる。
このプロジェクトでは、同社の鋼管杭回転切削圧入機「ジャイロパイラー™」および油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラー™」が使用され、既存の土堤内に複合壁体を圧入する。施工地は住宅密集地に隣接しており、周辺環境への騒音・振動を最小限に抑える工法が求められたことから、無振動・無騒音の圧入技術が高く評価された。
KIJKプロジェクトは、デルタプログラムの一環として、20万人超の命と暮らしを洪水から守ることを目的とする。提案は総合評価方式で審査され、経済性や施工性に加えて、イノベーションの観点も重視された。元請はVan Hattum en Blankevoort社とBoskalis Nederland社による共同企業体(JV)「KIGO」。下請にはVolker Staal en Funderingen社とGebr. De Koning社が参画する。技研製作所の欧州子会社である技研ヨーロッパ(オランダ)は、入札段階から技術提案と工事計画策定に協力してきた。
使用される杭材は、直径1016mm・長さ14~27mの鋼管杭約2500本と、幅1400mm・長さ10mのZ形鋼矢板約4500ペア。施工に使用される主な機材には、ジャイロパイラー™ F401-G1200、サイレントパイラー™ F401-1400、各種クランプクレーンなどが含まれる。
このプロジェクトの関係者は2023年、高知県香南市にある技研の圧入技術情報発信拠点「RED HILL 1967」を訪問しており、実機を見て技術の理解を深めたことが採択の後押しになったという。また、2025年4月にドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大の建設機械展「bauma2025」では、プロジェクト関係者間で正式な協定が結ばれた。
オランダのデルタプログラムは、高潮や洪水から国土を守り、安定的な淡水供給を確保するための国家規模の施策で、2050年までに全国で約1400kmの堤防と400基の水門・ポンプ場の改修・強化が計画されている。年間予算約2000億円がデルタ基金から拠出される。
技研製作所では、今回の採択を契機に、欧州をはじめとする気候変動リスクを抱える地域での技術提案活動をさらに強化する方針。圧入技術を活用した「環境負荷の少ない防災インフラ整備」の展開に注力していく。
画像:「インプラント工法™」による堤防補強工事のイメージ
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