日機装、東アフリカで医療用酸素プラント4基を受注

・Unitaid主導の支援プロジェクト、日本政府が資金拠出

 日機装(東京都渋谷区)は7月2日、国際医療支援機関Unitaid(ユニットエイド、スイス・ジュネーブ)主導の地域医療支援プロジェクトにおいて、東アフリカ地域向けの医療用酸素製造プラント4基(3施設)を受注したと発表した。設置先はケニアのモンバサ、ナイロビ、タンザニアのダルエスサラームで、現地酸素メーカーによる運営が想定されている。

 同プロジェクトは、日本政府が2023年度補正予算から730万ドル(約10億円)を拠出して支援しており、東アフリカの医療用酸素供給体制の強化を目指すもの。供給不足が続く同地域で、酸素の製造能力を高め、価格を下げることで、持続可能な医療供給体制の構築を図る。

■WHO傘下Unitaidが主導、酸素アクセス改善へ

 今回の案件は、Unitaidが展開する「East African Program on Oxygen Access(EAPOA)」の一環。コロナ禍を機に医療用酸素の重要性が世界的に再認識され、Unitaidは低・中所得国における酸素アクセスの改善を重要課題として掲げている。

 EAPOAは、酸素生産量を現在の約3倍にあたる日量60トンへと引き上げ、価格を最大27%引き下げる目標を掲げている。Unitaidによれば、ケニアとタンザニアの2か国だけでも今後10年間で最大15万4,000人の命を救う可能性があるという。

 2024年2月には当時の岸田首相が日・ケニア首脳会談で日本政府による支援を表明し、翌3月には資金拠出が正式発表された。

■EPCは米子会社が担当、ASU方式で供給安定性確保

 このプロジェクトにおけるEPC(設計・調達・建設)業務は、日機装の米国子会社グループであるClean Energy & Industrial Gases(CE&IG、本社:米カリフォルニア州テメキュラ)が担う。中小規模の液体酸素プラントに強みを持ち、インド市場でも医療用酸素装置の納入実績が豊富だ。

 設置するのは、深冷式空気分離装置(ASU)方式のプラントで、空気中の成分を沸点の違いで分離し、高純度の液化酸素を製造する。液化酸素は大型タンクに貯蔵され、必要に応じて気化して医療機関に供給される。電力が不要な自然気化方式のため、電力インフラが脆弱な地域でも安定供給が可能だ。

 また、CE&IGのASUは、工場でのプレファブ化を特徴とするモジュール方式で、現地組立の手間を大幅に軽減。輸送も数台のコンテナで済むため、インフラが限られる地域への導入にも適している。

■地域経済との連携と持続可能性を重視

 プラントは建設後、地元の酸素メーカーが管理・運営を担い、現地主導の持続可能な市場の形成が期待されている。3月にタンザニアのダルエスサラームで行われた起工式では、カシム・マジャリワ首相が「酸素供給の自立性が高まり、外部への依存を減らせる」と述べ、地域生産の重要性を強調した。

 日機装の加藤孝一社長は「長年にわたり医療機器分野でグローバルヘルスの改善に貢献してきた。今回、医療用酸素という新たな形でその取り組みを広げられることを誇りに思う」とコメントしている。

 Unitaidのフィリップ・デュヌトン事務局長は「先進的な技術を地域に根付かせることで、援助に頼らずとも自立した供給体制を築くモデルケースを示していきたい」と語った。

■周辺国への供給拠点としても活用へ

 プラントは、マラウイやモザンビークなどの近隣諸国への酸素供給拠点としての活用も視野に入れている。地域全体の医療用酸素の供給力を底上げすることで、将来的なパンデミックなどの医療危機への備えにもつながる。

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