・造形品の変形を抑制し、切削性を大幅に向上
ソディックは6月25日、同社の金属3Dプリンタ「OPMシリーズ」に対応する新しい粉末材料「HYPER21」の販売を開始したと発表した。この新素材は、造形品の変形を抑制しつつ、切削性を向上させることを目的として開発されたもの。
■HYPER21の主な特長は以下の通り。
・SRT工法の適用による切削精度向上
HYPER21は、ソディック独自の「SRT (Stress Relief Technology) 工法」に対応している。SRT工法とは、造形中に簡易的な熱処理を行うことで、造形物の反りやクラックを抑止する独自の工法である。これにより、OPMシリーズでの切削加工と組み合わせることで、加工サイズや形状によらず、高精度な仕上がりを実現できる。また、加工する部品のサイズが小さい場合、加工時間短縮のためにSRT工法を使わずに切削仕上げを行うことも可能である。
・良好な切削性・耐摩耗性
造形時の硬度を一般的なプリハードン鋼と同等のHRC40に合わせているため、良好な切削性と、量産成形にも耐えうる耐摩耗性や強度特性を両立している。
・高靭性によるクラック防止
靭性が非常に高いマルエージング鋼系の材料であり、造形中のクラックを防止することができる。実際にクラック耐性を確認するために、切り欠きのある部品を加工して試験を行った結果、SRT工法を使用しなくても、長さ230mmの部品を割れることなく積層造形することが可能であることが確認された。
・時効処理により高硬度化も可能
一般的なマルエージング鋼用の時効処理を施せば、HRC50以上の硬度も達成できる。時効処理なしの場合のHRC硬度は38〜42だが、時効処理を行うと51〜55になる。
・高耐食性
時効処理前のHYPER21は高い耐食性があり、成形樹脂による腐食や保管時の錆の発生を抑制できる。
・環境規制・輸出規制への対応
HYPER21は、コバルトを含まないマルエージング鋼がベースとなっているため、有害なコバルトを含有しておらず、「特定化学物質障害予防規則」などの環境規制の対象にはならない。時効処理後の引張強度も1,950MPa以下に抑えられているため、輸出規制についても規制対象外である。
・安心の国内生産
昨今の外部環境を鑑み、粉末を日本国内で生産しているため安定的な供給が可能であり、品質面の管理も適切に行われている。
HYPER21は、希少金属であるコバルトを含まないマルエージング系粉末材料であり、造形中の内部残留応力を開放して造形品の変形を抑制する同社独自の「SRT工法」に対応している。
また、造形品の硬度を機械加工がしやすいHRC40に合わせ、良好な切削性と量産成形にも耐えうる耐摩耗性や強度特性を両立している。これまでの金属3Dプリンタにおける金型造形では、一般的に造形面積が大きいため、内部に生じる残留応力の影響で部品が大きく変形し、仕上げ加工代が数ミリに達することや、強い応力が残ることによる経年変化での置き割れが発生する可能性があった。
ソディックがこれまでに開発した粉末材料「SUPERSTAR21」や「SVM」は、SRT工法を使用して残留応力を開放し、部品の変形防止、クラック防止に対応していたものの、造形時の部品硬度がHRC50以上と高く、「OPMシリーズ」機内での切削加工性には課題があった。HYPER21は、こうした課題を解決するため、残留応力を開放しつつ、切削加工性に優れた素材として開発されたのである。
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