・過去4,000件のデータを可視化、国内5,000名以上が利用
日本精工(NSK)は6月23日、生成AIを活用した品質トラブル参照アプリケーションを自社開発し、6月から運用を開始したと発表した。生成AIを本格的に活用した社内向けアプリケーションの開発は同社として初めての取り組みとなる。
このアプリは、NSKが長年蓄積してきた品質トラブルの情報約4,000件を対象に、グラフ表示と生成AIによる要約機能を備えたもの。従来は専門性が高く理解に時間を要したデータを、直感的な操作で誰でも容易に検索・把握できるようにした。例えば製品開発時のリスク要因を調べる際、目的に合った情報に最短30秒でアクセスできるという。
同社は2022年度から現中期経営計画に基づき、デジタル技術を活用した経営資源の強化を進めており、品質・技術力の向上が柱の一つ。今回の取り組みはその一環で、製品開発や工程設計時に蓄積された知見をテーブル形式でデータ化し、生成AIにより誰もが活用可能な形に整備した。
アプリ開発は2024年10月にスタート。品質トラブルデータへの生成AI適用に向けた技術検証を経て、アジャイル手法により約半年で正式導入に至った。UI(ユーザーインターフェース)も直感的に設計されており、専門用語や知識レベルに依存せず、社員の情報探索を支援する。
アプリには、同社専用環境で構築された生成AIを採用。セキュリティにも配慮し、AI特有の誤情報(ハルシネーション)対策として、AI品質管理や業務運営ルールも整備している。今後は営業や物流部門などにも対象を広げ、全社的な品質マネジメント強化と顧客対応の迅速化を図る。
さらに、国内展開に続き、海外拠点への導入も視野に入れる。機能面では、検索性や回答精度のさらなる向上を目指し、社内データとAIの活用を拡充していく方針だ。
NSKは1916年に日本初のベアリング製造を開始して以来、軸受、自動車部品、精機製品などで世界をリード。現在は約30か国に拠点を展開し、軸受分野で世界3位のシェアを誇る。中期経営計画「NSKビジョン2026」のもと、デジタル技術を通じた企業力の強化と社会への貢献を目指している。
画像は、アプリケーションの概要図
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