カナデビア(旧・日立造船)は6月20日、国立研究開発法人理化学研究所(理研)が推進する大型放射光施設「SPring-8-II」向けに、蓄積リング用真空機器を受注したと発表した。受注額は63億円(税抜)で、納期は2029年3月末を予定。
SPring-8-IIは、兵庫県佐用町にある放射光施設「SPring-8」の次世代型として整備が進む国家プロジェクト。既存設備の高性能化を目的に、文部科学省の事業予算の交付を受け、理研が開発を進めている。施設のアップグレードにより、放射光の明るさは現行比で約100倍に高まる一方、消費電力は半減し、保守コストも削減される計画だ。
今回カナデビアが手がけるのは、電子を真空状態で加速し放射光を取り出す中核設備である「蓄積リング」用の真空機器。リングの周長は1,435メートルに及び、48セル(予備1を含む)で構成される大規模装置となる。同社は真空機器の設計・製作・現地据付を一貫して担当する。
蓄積リングは電子を扱うため極めて高精度が求められ、カナデビアは過去の放射光施設への納入実績や試作経験を生かし、レーザー溶接やチェンバの精密な設置作業を進める。
SPring-8-IIの整備は、次世代半導体開発やバイオ医療、脱炭素素材の研究基盤となるほか、海外施設の高性能化に対抗する日本の競争力強化にもつながるとされる。カナデビアは本事業を「国家的プロジェクト」と位置づけ、産官学の連携による技術基盤構築に貢献する方針だ。
<案件概要>
案件名:SPring-8-II蓄積リング用真空機器
発注者:国立研究開発法人 理化学研究所
納入先:SPring-8(兵庫県佐用郡佐用町)
サイズ等:周長1,435m、48セル+予備1セル
納 期:2029年3月30日
受注額:63億円(税抜)