・GTCC発電設備でCO₂排出量22%削減、脱炭素化に弾み
三菱重工グループの米国現地法人である三菱パワーアメリカ(Mitsubishi Power Americas)は、6月17日、米電力大手ジョージア・パワーと共同で、世界最大規模となる水素50%混焼の実証試験に成功したと発表した。場所は同社が運営するジョージア州スマーナ市のマクドノフ・アトキンソン発電所で、大型のM501GAC形ガスタービンを用いたGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)発電設備において実施された。
今回の実証では、部分負荷から全負荷までの条件下で水素を天然ガスに体積比50%混合し、安定した運転を実現。CO₂排出量は天然ガス100%焚きと比較して約22%削減された。これは、2022年に同発電所で行われた水素20%混焼の成功に続く快挙であり、ジョージア・パワーが進める脱炭素化の取り組みをさらに加速させる成果となった。
ジョージア・パワーは、米国サザン・カンパニー傘下で最大の電力会社で、2007年以来CO₂排出量を60%以上削減してきた実績を持つ。今回の実証は、信頼性と経済性を両立させながら脱炭素を推進する同社の戦略の一環であり、三菱重工との協業によって実現した。
水素50%混焼に向けては、ガスタービンの冷却方式を蒸気から空気冷却に転換し、水素混焼の豊富な実績を持つJ形燃焼技術を導入。2024年に設備改修を行い、5%から段階的に混合率を高めながら試験を重ねた上で、2025年5月から6月にかけて最終実証を実施した。
マクドノフ・アトキンソン発電所は、アトランタ中心部から約15kmに位置し、80年以上にわたり電力供給を続ける中核発電所。2012年に天然ガスへの燃料転換を経て、現在はM501Gシリーズのガスタービン6基と蒸気タービン3基から成る3系列のGTCC設備で、最大170万世帯への供給能力を持つ。
今回の実証対象となったのは、出力28万3,000kWのM501GACガスタービン1基。三菱重工は、設備設計から機器提供、運転制御、試運転、リスク管理に至るまで一貫したターンキーサービスを提供した。水素の供給・物流については、北米の新エネルギー企業サータラス(Certarus)と連携。技術的な検証は、サザン・カンパニーの研究開発部門が担った。
三菱重工は今後も、2040年のカーボンニュートラル実現に向けてエナジートランジションを加速。今回のようなプロジェクトを通じて、水素混焼技術の高度化と信頼性確保を進め、脱炭素社会の実現に貢献していく考え。
画像:マクドノフ・アトキンソン発電所(写真提供:ジョージア・パワー)
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