不動産大手のヒューリック(東証プライム)は6月16日、ボーリング機器大手の鉱研工業(東証スタンダード)に対し、完全子会社化を目的とした公開買付け(TOB)を実施すると発表した。買付価格は1株あたり764円で、買付期間は6月17日から7月29日まで。買付予定数の上限は設けず、全株式の取得を目指す。なお、鉱研工業の取締役会はTOBに賛同しており、株主に対して応募を推奨している。
買付者のヒューリックは、今回のTOBで議決権の過半数(4,240,100株、所有割合50.00%)の取得を下限に設定。成立後は、株式併合などを通じたスクイーズアウト(少数株主の排除)により、鉱研工業を完全子会社とし、非上場化を図る方針。
鉱研工業は1947年創業。ボーリング機器の製造・販売や地下水・温泉開発、大口径掘削などの特殊工法を手掛け、国内外でインフラ整備に貢献してきた。近年は少子高齢化による人材確保難や資材価格の高騰といった経営課題を抱えており、非上場化のうえで、ヒューリックの資本力や顧客ネットワークを活かした成長戦略を選択した。
一方、ヒューリックは、ホテルや旅館の開発・運営、地熱発電など新規事業にも取り組んでおり、鉱研工業の高い掘削技術を取り込むことで、地熱関連ビジネスや温泉施設のメンテナンスなどでの相乗効果を見込む。また、建設会社との接点拡大やM&A支援なども通じ、鉱研の持続的成長を後押しする。
買付価格764円は、16日時点の終値503円に対して約52%のプレミアムを上乗せした水準。ヒューリックは「対象者の技術力と当社の経営資源の融合により、新たな価値を創出できる」としており、中長期的な成長基盤の強化を図る構え。