建設・農業機械業界、EU脱炭素政策に柔軟なアプローチを要請

・技術中立的な政策枠組みの必要性を強調

 ブリュッセル発 — 欧州の建設・農業機械メーカーの業界団体は6月3日、EU(欧州連合)の脱炭素化政策に関する共同声明を発表し、自動車分野とは異なる実情を踏まえた柔軟なアプローチの必要性を訴えた。

 建設・農業分野は欧州の経済・社会にとって不可欠な存在で、インフラ建設や食料生産において専用機械に大きく依存している。しかし、これらの機械は自動車とは大きく異なる使用環境に置かれているため、画一的な電動化政策では対応できないと業界は主張している。

 欧州建設機械工業会(CECE)と欧州農業機械工業会(CEMA)は共同声明で、「建設・農業機械は変化に富み、しばしば遠隔地で稼働するため、電動化が常に実用的とは限らない」と指摘。「万能な解決策は存在しない」として、EUに対してより幅広い技術の検討を求めた。

■「Well to Wheel」評価の採用を提言
 両団体は、排出量評価において「Well to Wheel」(燃料採掘から車輪まで)の視点を採用し、再生可能燃料、効率改善、運用最適化を含めた包括的なアプローチを取るよう要請している。

 農業・建設業の事業者は既に排出削減のインセンティブを持っているが、コスト、物流、インフラの面で課題に直面している。一方、メーカー側は多様で市場対応可能なソリューションを提供しているものの、進展は柔軟性と革新を可能にする政策に依存しているという。

■4つの重点政策領域を提示
 業界団体は実効性のある脱炭素化実現のため、EUに以下4つの重点領域での政策対応を求めている:

・公正で予測可能な補助金・燃料税制 — 低排出代替技術を罰するのではなく支援する制度設計
・イノベーション促進インセンティブ — エネルギータイプだけでなく、幅広い技術進歩の奨励
・インフラ・物流への投資 — 効率的な運用に必要なエコシステムの構築
・公共調達による需要主導型脱炭素化 — 低排出機械市場の刺激

■技術選別回避を強調
 声明では「技術中立的な枠組みが鍵」だとし、政策立案者に対して事前の技術選別を避け、メーカーと最終ユーザーが個別ニーズに最適なソリューションを展開できるよう求めている。

 「業界は既にコミットしている。今必要なのは進歩を制限するのではなく、可能にする政策だ」と両団体は結んでいる。

■CECEについて
 CECE(欧州建設機械委員会)は、欧州各国の業界団体を通じて1,200社の建設機械メーカーの利益を代表している。CECE加盟メーカーは年間590億ユーロを売上げ、生産量の大部分を輸出し、全体で約30万人を雇用している。CECE加盟メーカーは、最高の生産性と最小の環境負荷を実現する機器を提供するために、継続的な投資と革新に取り組んでいる。効率性、安全性、そして高精度技術が鍵となる。

■CEMAについて
 CEMA aisbl(www.cema-agri.org)は、欧州農業機械業界を代表する団体。11の加盟国協会を擁するCEMAネットワークは、大手多国籍企業と、この分野で活動する多数の欧州中小企業の両方を代表している。CEMAは約1,300社のメーカーを代表し、450種類以上の機械を製造している。年間売上高は約400億ユーロ、直接雇用者数は15万人。 CEMA 企業は、播種から収穫までの畑でのあらゆる活動をカバーする幅広い機械のほか、家畜管理用の機器も製造している。

 ニュースリリース