高所作業車大手のアイチコーポレーションは、2025年3月期決算説明資料で2025~2029年度を対象とする中期事業計画を発表した。「成長と利益の両立」を基本方針に掲げ、筆頭株主となった伊藤忠商事との連携や、過去最大規模の設備投資、海外売上の大幅な引き上げを進める構えだ。
■伊藤忠商事と資本・事業連携
・リース・中古車事業などでバリューチェーン拡大
2025年5月15日、伊藤忠商事が豊田自動織機に代わって筆頭株主(議決権比率27.3%)となった。これを機に、伊藤忠が持つ59カ国・85拠点のネットワークやリース・中古車流通のノウハウを活用し、新たな成長戦略を加速する。
両社は、リース事業の本格展開や、中古車のグループオークションへの出品、海外物流の効率化、グループ調達による原価低減など、多面的な協業をすでに開始している。中古車は2025年6月に専用オークションを立ち上げる予定で、早期の実行が図られている。
■海外展開を加速、売上比率を20%へ
・ASEAN・欧州・北米に重点、伊藤忠の拠点活用
現在約5%にとどまる海外売上比率を、2029年度には20%(売上高150億円)まで高める計画。重点地域は東南アジア、欧州、北米で、現地パートナーや駐在員との連携を強化し、販売網・部品供給体制の再構築を進める。
特に欧州では既存パートナーのSAHAリフト社と伊藤忠商事との連携を深め、ドイツ中心から南欧・東欧にも販路を拡大する。ASEANでは電力事業者向け営業を強化し、北米では輸出体制の整備を進める。
■高崎・伊勢崎に大型投資 設備投資は過去最高
・高崎に自走式専用工場、伊勢崎に塗装工場を新設
2025年度の設備投資額は90億円と、前年度の約3倍に拡大。高崎市に建設中の新工場(稼働予定:2026年1月)は自走式高所作業車の組立専用拠点で、初期投資額は85億円。大型・小型車両を同一ラインで生産できるフレキシブルなライン構成とし、生産性向上を図る。
加えて、伊勢崎事業所では電着塗装工場(投資額35億円)を2026年9月に稼働予定。生産拠点の機能再編により、部品内製化と物流効率化を進め、全体で生産性を約40%高める計画だ。
▽数値目標:売上830億円、ROE10%超を目指す
2029年度までの目標として、売上高830億円、営業利益140億円、海外売上150億円、ROE10%超を掲げる。伊藤忠商事や豊田自動織機との連携によって、製販一体となった構造改革を推進し、企業価値の一層の向上を図る方針。
アイチコーポレーションの2025年3月期決算説明会資料(2025年5月21日)
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