日本建設機械工業会(建機工)、2025年度事業計画を発表、産業基盤強化とグローバル展開で持続的発展を目指す

 日本建設機械工業会(建機工)は5月26日、令和7年度(2025年度)事業計画を発表した。12ページにわたる計画書では、国内外の需要動向や産業基盤強化、グローバル化、カーボンニュートラル対応など、建設機械産業が直面する課題への対応策を網羅している。

■国内外の需要動向と今後の見通し
 令和6年度(2024年度)の建設機械産業は、国内・海外ともに4年ぶりの出荷減少に見舞われた。国内では金利上昇による設備投資意欲の低下、海外では北米・欧州・アジアなど主要地域での金融引き締めによる金利高止まりが影響した。しかし、令和7年度(2025年度)は国内需要が安定した公共投資の継続で底堅さを維持し、海外需要もミニショベル等の需要増加により緩やかな回復が見込まれる。
 震災からの復興事業及び産業の基礎であるインフラ整備は喫緊の事業であり、建設機械のニーズ及び業界に対する期待は高まっている。工業会は「調和と発展による世界への貢献」という基本理念のもと、会員企業各社が安心・安全な建設機械の提供を通して復興に貢献する活動が求められるとしている。

■重点活動分野と事業方針
 令和7年度(2025年度)も、平成24年度(2012年度)に策定したビジョンを継承し、以下の4点を重点活動分野とする。
• 震災からの復興への貢献
• 環境・省エネルギー対応
• グローバル展開の支援(海外市場での活動支援)
• 新しい技術への対応
 加えて、コンプライアンス強化を徹底し、理事会や各委員会に法律専門家を同席させるなど、公益目的の追求と適法な活動運営を徹底する方針。

■主要事業の概要
Ⅰ 経営の高度化(経営高度化委員会)
 中堅・中小企業は輸出比率が低く、国内需要動向の影響を受けやすい。現場見学会や経営高度化セミナーの開催、海外進出支援などを通じて、経営力強化を図る。特に、経営トップ向けの冬期セミナー、海外有望地域の市場調査、会員間の意見反映体制の強化などが重点課題。
Ⅱ 健全な流通・サービス基盤の整備(流通サービス委員会)
 流通競争の公正化とサービス基盤強化に向け、移動式クレーン定期自主検査者認定制度の運用、債権保全体制の強化、中古建機情報NETの活用、サービス人材不足への対応などを推進。また、災害復興事業や福島原発関連施設の建設現場でのサービス活動も支援する。
Ⅲ 環境、安全、その他技術的課題への対応(技術製造委員会)
 排出ガス規制やカーボンニュートラル対応、化学物質規制など、環境・安全分野の社会的要請に応える。国際基準との調和や新技術開発、製品開発、製造から廃棄に至るまでの技術課題にも積極的に取り組む。国際技術交流会議を通じ、欧米・新興国との規制・規格情報の共有や日本のイニシアティブ発揮も目指す。
Ⅳ グローバル展開の支援(国際委員会)
 海外市場の変化に対応し、情報収集と友好団体との交流を強化。JETRO等と連携した展示会出展、米国市場調査、サプライチェーン・地政学リスク情報の共有、国際規制対応なども推進。G-ACE会議(旧IAC会議)の開催や、米欧韓中印の友好団体との協力体制も拡充する。
Ⅴ 将来の事業環境の変化への対応(イノベーション委員会)
 i-Constructionやコネクテッド・インダストリーなど新政策・新技術への対応、将来の環境変化要因の整理、建設機械施工の自動化・自律化への取り組みを推進。国土交通省への要望書提出や、実用化に向けた調査も継続する。
Ⅵ 円滑な事業運営(運営委員会)
工業会運営の合理化・適法化を進め、会員間の情報共有やコミュニケーション強化、情報システムの活用、会員拡大、予算・事業計画の総合調整を実施。創立35周年記念事業の企画・実施、中小企業支援策への対応、税務・統計調査の強化も行う。

■今後の展望と課題
 建設機械産業は、カーボンニュートラルやデジタル化、グローバル競争激化など、大きな転換期を迎えている。工業会は会員企業の経営力強化、流通・サービス基盤の整備、環境・安全対応、グローバル展開支援、新技術への対応、事業運営の効率化を多角的に推進し、産業全体の発展に寄与する方針だ。
 また、コンプライアンスや公益目的の徹底、情報発信の強化、国際的な連携の拡大など、社会的責任を果たす姿勢も強調されている。今後も、震災復興やインフラ整備、新技術導入など、社会の要請に応えながら、建設機械産業の持続的発展を目指す

 令和7年度(2025年度)事業計画書