建設機械と農業機械における脱炭素化の動向

 OEM Off-Highway :2025年5月23日

 建設機械と農業機械の脱炭素化を巡る動向が鮮明になってきた。完全電動化の限界が明らかになる中、オフハイウェイ業界では代替的な脱炭素化策の模索が進んでいる。

 オフハイウェイ機械の脱炭素化は、環境規制や運用コスト削減、持続可能な慣行に対する社会的要請の高まりを背景に推進されている。電動化された機械は騒音低減などの副次的効果もあり、都市部で使用される建設機械では重要な要素となっている。しかし、農業機械や建設機械分野では電動化の進展は限定的で、2030年まで大きな普及は見込まれていない。

 近年、電動農業用トラクターのデモ車両が登場しているが、課題も浮き彫りとなっている。小型トラクターは1日5時間未満の稼働が一般的で、バッテリー容量やコストは抑えられるが、運用コストが低いため電動化への投資はビジネス上困難とされる。

 一方、ユーティリティトラクターは1日8~10時間の稼働が必要で、バッテリー容量と重量が増大。大型トラクターでは車両重量が2倍になるケースもあり、土壌圧縮の悪化や作物収量への影響が指摘され、電動化の実現性に制約が生じている。

 建設機械ではミニショベルが電動化に適している。都市部での排出量・騒音削減が求められ、標準的な電源で充電可能なことから多くのメーカーが電動ミニショベルを投入している。しかし、大型ショベルではバッテリーの重量・コスト増や遠隔地での充電インフラ整備の課題が残る。

 一方、ハイブリッド化によるエネルギー回収技術の導入が進み、燃費向上や稼働率向上につながる事例も出ている。

 完全電動化の限界を受け、バイオディーゼルや再生可能ディーゼルなどバイオマス由来燃料の活用が注目されている。純粋なバイオディーゼル(B100)で稼働するエンジンはすでに存在するが、生産量は需要に追いついていない。

 米国では生産量が増加しているものの、普及は政策依存が強く、カリフォルニア州の低炭素燃料基準(LCFS)などのインセンティブがなければコスト競争力に課題が残る。EPAの再生可能燃料基準(RFS)が生産目標を下回ったことで、一部工場の稼働率低下や閉鎖も発生した。

 それでも、バイオマス由来ディーゼルは米国産大豆の需要を牽引する重要な市場となっており、今後は農業機械の脱炭素化と農業収入源の両面で期待が高まる。新たな関税や世界的な需要減少を背景に、国内市場の重要性が増している。

 脱炭素化の実現には、電動化と並行してバイオ燃料など多様な技術の導入が不可欠となっている。

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