鹿島は5月22日、鉄道やトンネル工事などの狭い施工環境下で、バックホウが既設構造物に接触・衝突する事故を防ぐための衝突防止システムを開発したと発表した。同システムは、バックホウに搭載したLiDAR(ライダー)センサーが危険を検知し、重機を自動停止させることで、作業の安全性を大幅に向上させる。既に実工事への適用も開始している。
同システムは、2台の2次元LiDARセンサー、3台の傾斜センサー、および検知範囲の設定と危険認識を行うコンピューターで構成される。バックホウのブームやアームが上下・旋回する際に、事前に設定した検知範囲内に既設の切梁や電線ケーブルなどが侵入すると、バックホウの動作を強制的に自動停止させる仕組み。同時に、キャビン(運転席)内のモニターに警告ランプが点灯し、ブザー音でオペレーターに危険を知らせる。検知範囲は施工条件に応じて任意に設定可能だ。
■熟練オペレーター減少に対応
開発の背景には、狭隘な空間でのバックホウ掘削作業の難しさと、熟練オペレーターの減少がある。これまでは、熟練したオペレーターの高度な技能に加え、誘導員や監視員の配置によって接触・衝突事故を防いでいた。しかし、今後、熟練オペレーターの高齢化が進むことが避けられないため、オペレーターの技量や目視に依存しない、新たな安全対策が求められていた。新システムは、経験の浅いオペレーターでも安全に作業できる環境を提供し、労働力不足への対応にも寄与する。
■実工事で効果を実証
鹿島は今回開発したシステムを、横浜高速鉄道の「みなとみらい21線車両留置場建設工事」と、西武鉄道の「新宿線中井~野方駅間連続立体交差事業に伴う土木工事」の2つの現場に導入。土砂積込み作業や軌道下の地下掘削作業といった実作業でその効果を確認した。
現場適用では、オペレーターが目視で確認しにくい高さの既設物や、絶対に傷つけたくない構造物への接触・衝突を防止。経験の浅いオペレーターの操作支援や、不注意による接触・衝突の防止にも効果を発揮したという。
鹿島は今後、同システムを同種工事で長期的に適用し、耐久性の検証を進める。また、センサーによる検知精度のさらなる向上を図り、将来的には全国の土木および建築工事への普及・展開を目指すとしている。
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