アイチコーポレーションは5月21日、「2025年3月期決算説明会資料」を公開した。
主な内容:
1. 中期事業経営計画
2. 24年度の業績
3. 25年度の業績見通し
4. 環境・社会貢献の取り組み
5. 株主還元
<補足記事>
高所を拓く技術革新のフロンティア ~アイチコーポレーション、成長戦略の軌跡と未来
高所作業車や穴掘建柱車といった特殊車両のリーディングカンパニーとして、日本のインフラを支え続けてきたアイチコーポレーション。創業以来培ってきた確かな技術力と、常に市場のニーズを捉える先見の明で、同社は今、新たな成長ステージへと舵を切っている。堅調な業績を背景に、大胆な中期経営計画を打ち出したアイチコーポレーションの「今」と「これから」に迫る。
■成長の証し:安定的な高収益を誇る盤石な事業基盤
アイチコーポレーションの直近の業績は、同社の事業の強固さを物語る。2025年3月期決算では、売上高593億600万円(前期比12%増)を達成。営業利益も74億4,000万円(同17%増)と二桁成長を記録し、親会社株主に帰属する当期純利益は63億3,400万円(同20%増)と大幅な増益を記録した。
特筆すべきは、主力である特装車セグメントが15%増収と業績を牽引した点だ。社会インフラの整備や維持管理、そして電力・通信網の構築といった、社会になくてはならない分野で同社の製品が高い評価を得ていることがわかる。さらに、部品・修理セグメントも堅調に推移しており、製品納入後のアフターサポートまで一貫して顧客の信頼を獲得している証左と言えるだろう。この好調な業績を背景に、同社は1株当たり年間配当を前期比15円増の55円に増配した。株主への還元も怠らない姿勢を示した。
続く2026年3月期も、売上高3%増、経常利益1%増、最終利益3%増と堅実な成長を計画しており、年間配当も前期比5円増の60円とする方針を打ち出す。直近の四半期決算では、連結経常利益が前年同期比で41.9%増と大きく伸びており、今期も好調な滑り出しを見せている。
■未来を拓く羅針盤:中期事業経営計画が示す成長戦略
アイチコーポレーションは、この堅調な業績を足がかりに、新たな中期事業経営計画を策定した。その根底には、「全てのステークホルダーに対し、感謝の心で貢献し続ける」という経営理念が据えられている。同社は2027年度のROE10%達成、さらにそれ以上の向上を目指すとしている。
この計画の柱となるのは、以下の3つの戦略だ。
■売上拡大戦略「伊藤忠商事と連携したシナジーの創出」:
2025年5月15日に伊藤忠商事が豊田自動織機に代わり筆頭株主となったことを受け、同社との連携を強化し、更なる売上拡大を目指す。
具体的には、海外物流の効率化、新車販売、リース事業化(リース事業ノウハウの活用、メーカーメンテナンス付きリース、海外リース展開)、中古事業強化(グループプラットフォームの利用、リースアップ車両の流通(海外を含む)による中古車価値拡大)、海外サービス体制の拡充を通じてバリューチェーン全体の価値を最大化する。
海外売上拡大においては、世界59ヶ国85拠点の伊藤忠商事の海外ネットワークを活用し、欧州(SAHAリフト社との連携による南欧・東欧地域への販売地域拡大)、東南アジア地域(電力事業者向け拡販、商流整備・部品供給体制再構築)を優先検討国として売上拡大を図る。
■拠点再編による大幅な生産性向上:
生産体制の強化に向けて、新治工場をトラックマウント式専用工場とし、大型自走式の組立も行うことで生産台数を約40%増やす計画だ。
伊勢崎工場は部品専用工場へ変革し、電着塗装設備を新設する。これにより、中期経営計画の売上拡大に伴う能力増強と内製化拡大に対応する。
新しく高崎工場を建設し、2026年1月の稼働を目指す。高崎工場は自走式組立専用工場となり、大型・小型自走式高所作業車を同一ラインで流せるフレキシブルなライン構成により生産性向上を図る。
新工場の稼働開始に合わせ、物流の内製化を含めた改善を実施。新治〜高崎工場間の定期巡回便の設定による個別物流の削減や、伊勢崎〜新治間の遠距離物流量の削減を進める。
■環境・社会貢献の取り組み:
**災害復旧支援活動「CAS」**を推進。「そなえる(全国サービスネットワーク、災害復旧バックアップ体制)」「つながる(車両の稼働状態管理、車両の位置情報提供)」「つくる(道路障害物除去、応急電源確保・移動充電車など)」の3つの側面から、災害復旧作業の安全と迅速化に貢献する。北陸電力送配電株式会社と「災害時における復旧作業の支援に関する協定書」を締結するなど、具体的な活動も進めている。
CO2削減の取り組みとして、生産活動では高崎事業所に太陽光発電システムを導入しCO2排出ゼロを目指す(2026年1月稼働予定)。製品面では、2024年3月発売の電動自走式高所作業車「RU09A1SM」や2024年7月発売のリチウムイオンバッテリー搭載車など、電動車種を中心とした販促によりCO2排出量削減目標達成を目指す。
地域貢献活動として、小学生の社会科見学の受け入れ(2024年度は9校約750名が来訪)、駅伝大会開催による地域・社内外連携強化、生物多様性保全を目的とした外来植物の除草ボランティア活動、事業所近隣の清掃活動などを継続的に推進する。
■高所を競い合う強豪たち:ライバル企業とアイチの優位性
特殊車両の分野において、アイチコーポレーションが競合する主なライバル企業としては、建設用クレーンや高所作業車などを手掛けるタダノが挙げられる。特にカーゴクレーンにおいては、タダノは国内トップクラスのシェアを誇り、同業他社として常に意識される存在だ。
また、資本関係があるものの、高所作業車市場では豊田自動織機も一部で競合する事業領域を持つ。さらに、グローバルな視点で見ると、JLG(Oshkosh社傘下)、Genie(Terex社傘下)、Haulotte、Manitouといった欧米の大手企業が、アイチコーポレーションのライバルとして存在感を放つ。
このような強豪ひしめく市場において、アイチコーポレーションは安定して高い利益率を維持しており、グローバルな同業他社と比較しても高水準にあると評価される。これは、長年にわたる技術開発力、高品質な製品、そして充実したアフターサービスが顧客から高く評価されている証拠と言えるだろう。
■社会の未来を支えるアイチコーポレーション
アイチコーポレーションは、単に特殊車両を製造する企業にとどまらない。電力・通信網の整備、災害復旧、都市の建設・維持管理など、私たちの生活に不可欠なインフラを「高所」から支え、社会の発展に貢献している。
「中期事業経営計画」で示された成長戦略は、国内外の市場拡大、基盤事業の強化、そして持続的な企業価値向上への明確な道筋を描く。技術革新と社会貢献を両立させるアイチコーポレーションの挑戦は、これからも日本の、そして世界の「高所」を拓き続けることだろう。今後の同社の動向から目が離せない。
この記事は、同社の公表された資料等を参考にして当サイトが編集・作成しました。
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