日立建機の先崎正文社長は5月19日、新年度のメディア合同ミーティングを開催し、決算説明会を補足する意味で、中期経営計画の進捗状況における注目点・その他について説明した。以下に、その内容を要点を絞って紹介する。
■新コンセプト「LANDCROS」:デジタル技術を駆使した革新的なソリューション 先崎社長は、新たなコンセプト「LANDCROS」を重要な柱の一つに挙げた。「LANDCROS」は、革新的なソリューションを提供したいという同社の思いを表す言葉であり、具体的な取り組みとして、今年4月より顧客や代理店、パートナー企業と日立建機グループをオープンにつなぐ「LANDCROS Connect」の提供を開始した。「LANDCROS Connect」は、顧客が利用する多様なソリューションへのアクセスを一元化し、オープンソース技術で開発された。これにより、顧客は日立建機製だけでなく、他社製の資産も含めて包括的に管理できるようになる。
特に、高度なソリューションが求められるマイニング分野においては、自社開発の「LANDCROS Connect Insight」を通じて、より深いオペレーション改善ソリューションを提供している。将来的には、自社ブランドの鉱山機械に加え、顧客が保有する鉱山管理データや、グループ会社・ビジネスパートナーが収集するデータを統合し、鉱山運営の効率化に貢献していく方針だ。
先崎社長は、「デジタル技術を最大限に活用し、顧客ニーズにオープンに対応していく」姿勢を強調した。
■電動化への取り組み:オープンな連携で業界をリード
電動化への取り組みも重要なテーマとして挙げた。同社は、この分野で世界のトップクラスを自負しており、昨年5月に千葉県市川市に設立した研究拠点「ゼロエミッションEV-LAB」には、すでに320名を超える来場者があった。日本国内で販売している5トン、8トン、13トンの電動ショベルは、国土交通省のGX建機認定制度の認定を受けており、補助金活用を検討する顧客からの問い合わせが増加している。
マイニング分野では、世界初となる超大型フル電動ダンプトラックの実証実験が最終段階を迎えており、2027年度の製品化を目指し開発が進む。この分野でも「オープン」がキーワードとなっており、日立製作所、ABB、EV-LABに参加する伊藤忠商事、いすゞ自動車、九州電力に加え、ドイツのスタートアップ企業KTEGなど、多様なパートナーとの連携によってソリューションを展開している。先崎社長は、電動化においても「強みのハードを基盤としたデジタル技術の展開」を重視する考えを示した。
■中南米事業の基盤強化:米州売上3,000億円の達成へ
中南米事業の強化も重要な戦略の一つだ。チリに設立した地域統括会社が今年4月から営業を開始し、顧客との密なコミュニケーションを可能にする販売・サービス体制を確立した。また、ブラジルでは丸紅との合弁による販売サービス会社が3月に始動し、好調なスタートを切っている。日立建機は、これらの取り組みを通じて中南米での事業基盤をさらに強化し、来期2026年度に米州売上3,000億円の目標達成を目指す。
■米国トランプ関税の影響:最小化に向けた取り組み
米国による関税の影響についても言及した。先崎社長は、決算発表(4月25日)時点での影響額300億円から現時点での見解に変化はないとしつつも、米国の需要環境の不透明感が増しているとの認識を示した。その上で、関税影響を最小化するための施策として、以下の2点を挙げた。
* 販売価格への反映:可能な限り販売価格に転嫁していく方針だが、競争環境を考慮しながら慎重に進めるとしている。
* バリューチェーンビジネスの強化:米国におけるシェアを着実に拡大し、稼働台数を増やすことで、部品販売やサービスなどのバリューチェーンビジネスを強化し、関税の影響を吸収していく考えだ。
■インド市場をグローバル製造拠点の一つへ
会見では、日立建機におけるインド市場の新たな位置づけについても言及した。これまでインドの拠点は、主に国内市場向けの製品供給を担っていたが、先崎社長は、同社が品質向上に注力してきた結果、インド工場の製造品質が飛躍的に向上したと強調した。グローバルなものづくりの評価指標においても、インド工場が世界トップレベルの評価を得る項目もあるほどだ。その証として、年1回開催される全世界の工場が集まる技能協議会において、インドの選抜メンバーが塗装部門などで目覚ましい成績を収めていることを挙げた。
先日、ゴールデンウィークに全工場を視察した際にも、インド工場の高いレベルを再認識したとのことだ。生産ラインの表面だけでなく、裏側のメンテナンス状況なども確認した結果、非常に良好な状態であったと語った。
今回のインド訪問には西澤 格CTOも同行し、これまで以上にインドが日立建機の世界的な製造拠点としての役割を担う可能性を検証した。その結果、高品質な製品をより安価に製造できる体制が構築されつつあるという認識に至った。
世界が多極化する中で、これまで日本のほか、中国、インドネシアがグローバル拠点として重要な位置を占めていたが、今後はインドを明確にその一角に加えるべきだと考えている。その表れとして、すでにインドから東南アジアに向けてバックホーローダーを供給する体制が整っており、今後この動きを加速していく方針を示した。
(注:上記は、報道記事に基づき、会見内容を分かりやすく再構成したものです。より詳細な情報や正確な内容については、日立建機が公開しているIR資料等をご参照ください。)
参考:日立建機の2024年度決算説明資料(ノート付き)
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