北川鉄工所が5月13日に発表した2025年3月期(2024年度)連結業績によると、売上高は57,280百万円(前期比 7.0%減)、営業利益は1,872百万円(同11.4%増)、経常利益は2,315百万円(同3.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,246百万円(同1.6%減)となった。売上高は金属素形材事業のタイ工場の閉鎖等により減少となったが、産業機械事業、半導体関連事業の収益性が改善されたこと等により営業利益が前期比で増加した。
2024 年度における世界経済は、中国経済の低迷や不安定な中東情勢、米国政府による輸入品関税の引上げリスクなど先行き不透明な状況が続いているが、米国での個人消費の増加やインフレの緩和による欧州経済の持ち直し等により緩やかな回復基調で推移した。また、わが国経済も、物価の高止まりや急激な為替の変動など先の見通せない状況が続いているが、雇用・所得環境の改善等もあり、個人消費や民間設備投資は持ち直しの動きが見られた。このような経営環境下において、同社グループは、2021年11月に長期経営計画「Plus Decade 2031」を策定し、さらに2024年11月には「中期経営計画2027」を策定した。これらの計画に基づき、基盤事業の収益力の改善・強化および資本の効率的な活用を通じて、事業および収益構造の転換に向けた基盤構築を着実に推進していく。
■ セグメントごとの業績
<キタガワ グローバル ハンド カンパニー(工作機器事業)> 工作機械業界は、全体として需要の力強さを欠き、受注高は前期比で横ばいに推移した。電気自動車(EV)関連等の投資が底堅く推移したことで海外向けは増加したが、国内向けは中小企業を中心に設備投資について慎重な姿勢が見られ減少となった。
売上高は、海外はインド向けを中心に受注が増えたものの、国内は設備投資の低迷が影響し、9,031百万円(前期比 2.2%減)となった。また、セグメント利益(営業利益)については、売上高の減少や1月に完成した本社工場棟への設備移設費用の計上などにより、427百万円(前期比 43.8%減)となった。
<キタガワ サン テック カンパニー(産業機械事業)>
建設業界は、慢性的な建設労働者不足による労務費の高騰や建設資材価格の高止まり等により一部で建設延期や計画の見直しが発生していますが、公共投資、民間建設投資ともに好調であり底堅く推移した。
売上高は、概ね計画通りに推移し、20,004百万円(前期比 1.3%増)となった。また、セグメント利益(営業利益)についても、原材料コスト上昇分の価格転嫁や立体駐車場事業における施工管理の徹底などにより安定した収益が確保できたため、1,668百万円(前期比 46.2%増)となった。
<キタガワ マテリアル テクノロジー カンパニー(金属素形材事業)>
自動車業界は、世界的なEV需要の減速や米国による関税引上げ、国内自動車メーカーの不正認証の問題など先行きの見通せない状況が続いているが、市況は概ね横ばいに推移している。一方、農業機械・建設機械業界については、欧米の高金利の影響による住宅着工数の減少や中国でのエンジン需要の低下などの影響が強く、市場は弱含みで推移している。
売上高は、タイ工場の閉鎖に伴う売上の減少や自動車部品・農業機械部品の受注量減少により、24,725百万円(前期比 17.0%減)となった。また、コスト低減活動や、販売価格改定により収益性は徐々に改善しているものの、受注量減少の影響が大きく、セグメント損失(営業損失)は、128百万円(前期セグメント利益(営業利益) 102百万円)となった。
<半導体関連事業>
半導体業界は、在庫調整による調整局面が終了し、緩やかに持ち直して推移している。売上高は、連結子会社である北川グレステックがハードディスク製造装置の大型案件の売上を計上したこと、半導体関連の消耗品販売および受託加工が順調に推移したことにより、2,512百万円となった。 セグメント利益(営業利益)については、586百万円となった。
なお、同事業セグメントは2023年9月30日をみなし取得日として子会社化したケメット・ジャパン㈱およびシステム精工㈱の事業によって構成されており、前年度については、6ヶ月の業績となっている。これにより、2023年度と比較対象期間が異なるため、前期比の記載は省略している。
■ 今後の見通し
今期の経営環境については、世界経済は米国政府による関税の引上げ、米中貿易摩擦の再燃、地政学リスクなどにより依然として不確実性の高い状況が続くものと予想している。一方で、日本経済については雇用・所得環境の改善や企業の設備投資意欲の高まりにより緩やかに回復していくものと予想しているが、世界経済の減速による外需の低迷や、物価上昇による消費者の購買意欲低減など下振れリスクに注視する必要がある。このような状況のもと、同社グループは長期経営計画「Plus Decade 2031」で掲げる世界基準の成長を実現するため、「中期経営計画2027」で策定した目標の達成を目指し、チャレンジする人財の育成、低採算からの脱却、新領域への挑戦に注力していく。
2026年3月期(2025年度)の業績見通しについては、売上高は58,300百万円(前年度比1.8%増)、営業利益は1,700百万円(同9.2%減)、経常利益は1,800百万円(同22.%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,400百万円(同92.5%増)を見込んでいる。
次期のセグメントごとの主な取り組みは、次のとおり。
<キタガワ グローバル ハンド カンパニー(工作機器事業)>
海外での生産能力の増強や国内外の営業連携強化により海外市場への展開を強化し、また、既存商品の応用や商品とシステムを統合したソリューション提案を推し進め、新たな事業領域へ進出する。さらに、DX活用による業務効率の向上や商品の統廃合およびリニューアル、販売価格の見直しなど商品戦略を再構築することにより、事業体制の基盤強化に取り組んでいく。以上により、売上高は10,400百万円、営業利益は710百万円を見込んでいる。
<キタガワ サン テック カンパニー(産業機械事業)>
コンクリートプラント事業はリードタイムの短縮や、設備配置の自由度の向上により市場競争力を高めていく。荷役機械事業は既存商品のシェア拡大を図り、クレーン製造で培った技術の水平展開による新たな商品開発を行う。自走式立体駐車場事業は徹底した収益管理により、安定した収益確保に取り組んでいく。以上により、売上高は20,800百万円、営業利益は1,970百万円を見込んでいる。
<キタガワ マテリアル テクノロジー カンパニー(金属素形材事業)>
経営資源の最適化を目指し、生産性の改善や業務の効率化を進めていく。また、継続的な価格交渉により不採算部品の収益性を高めるとともに、不良率の低減およびライン稼働率の向上によりオペレーションの改善を図る。既存事業の最適化と並行し、新規市場・製品の開発をより強化し、新たな事業領域への参入を目指す。以上により、売上高は24,300百万円、営業利益は200百万円を見込んでいる。
<半導体関連事業>
装置販売体制の強化を行い、半導体等の装置受注の拡大を図っていく。また、半導体製造装置を中心とした長期的な事業成長を目指し、半導体分野の対応力強化に向けた投資を本格化する。なお、前期でハードディスク関連の大型案件が完了したことにより売上が大幅に減少するため、売上高は1,550百万円、営業利益は0百万円を見込んでいる。また、無人航空機事業について、事業化の見通しや商品の開発状況、商品リリース後のリスクを鑑み、今後の成長が見込まれる分野へ経営資源を集中させるため、事業の撤退を決定した。
なお、今回の米国政府による関税政策が同社グループの事業および業績に与える影響を合理的に見積もることは困難なため、上記の業績予想に織り込んでいない。今後、業績予想の修正の必要性が生じた場合は速やかに開示する。
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