川崎重工、24年度の売上収益は15.1%増の2兆1,293億円、25年度予想は8.5%増の2兆3,100億円

・受注高は26.3増の2兆6,307億円、25年度予想は16,4%減の2兆2,000億円となる見通し

  川崎重工業が5月9日に発表した2025年3月期(2024年度)業績によると、連結受注高は前期比5,472億円増加の2兆6,307億円、連結売上収益は前期比2,800億円増収の2兆1,293億円、事業利益は前期比969億円増益の1,431億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比626億円増益の880億円となった。また、事業利益率は6.7%、税後ROIC(※)は8.0%、ROEは13.2%となった。資本コスト(WACC)は7%台と算出している。

 2024年度における世界経済は、米国では堅調な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しているものの、新たな関税政策による各国の景気減速や経済成長の鈍化への警戒感が強まっている。加えて、長期化する中国経済の停滞や米中関係の緊張といった地政学的リスクの懸念など、先行きは依然として不透明な状況。国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等による内需主導で緩やかな景気回復が見られるものの、米国関税政策及びそれに伴うサプライチェーンの変化や金融資本市場の急激な変動など、先行きの不透明感が高まっている。
 
 このような経営環境の中で、2024年度における川崎重工グループの連結受注高は、航空宇宙システム事業、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増加により、前期比で増加となった。連結売上収益については、航空宇宙システム事業を中心とした各事業での増収により、前期比で増収となった。利益面に関しては、事業利益は、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業での改善や、エネルギーソリューション&マリン事業での増益などにより、前期比で増益となった。親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の増加などにより、前期比で増益となった。

 川崎重工2025年3月期通期データ

■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
 抜本的な防衛力強化や航空旅客需要の回復による需要の増加が期待される中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、前期に比べ1,902億円増加の8,828億円となった。
 連結売上収益は、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を計上した前期に比べ、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、1,716億円増収の5,678億円となった。事業損益は、増収などにより、前期に比べ708億円改善して558億円の利益となった。
<車両事業>
 国内市場はインバウンドの復調等により鉄道車両への投資が再開されつつあり、海外市場は大都市の混雑緩和対策のための都市交通整備などに伴う需要が見込まれる中で、連結受注高は、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車のオプション契約を受注したことにより、前期に比べ1,627億円増加の2,515億円となった。
 連結売上収益は、国内・アジア向けが減少したものの、米国向けが増加したことなどにより、前期に比べ263億円増収の2,223億円となった。事業利益は、増収などにより、前期に比べ46億円増益の84億円となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
 国内外の分散型電源需要やエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。連結受注高は、LPG/アンモニア運搬船や防衛省向け潜水艦の受注増加などにより、前期に比べ1,403億円増加の5,420億円となった。
 連結売上収益は、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や防衛省向け艦艇用機器での増収などにより、前期に比べ448億円増収の3,981億円となった。事業利益は、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前期に比べ123億円増益の442億円となった。

<精密機械・ロボット事業>
 半導体メモリ市場の価格と需要が底を打ち、中国建設機械市場は輸出を中心に回復傾向にある中で、連結受注高は、半導体製造装置向けロボットや中国建設機械市場向け油圧機器が増加したことなどにより、前期に比べ359億円増加の2,492億円となった。
 連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや精密機械分野での増収を主要因として、前期に比べ135億円増収の2,415億円となった。事業損益は、増収に加え、これまで進めて来た価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前期に比べ89億円改善して70億円の利益となった。
<パワースポーツ&エンジン事業>
 米国政権による関税政策の影響が懸念されるが、連結売上収益は、リコールや生産遅延等の影響で北米向け四輪車が一時的に減少したものの、二輪車の増加と円安が収益を押し上げたことにより、169億円増収の6,093億円となった。事業利益は、増収はあったものの、増産投資による固定費の増加などにより、前期並みの478億円となった。
<その他事業>
 連結売上収益は、前期に比べ66億円増収の901億円となった。事業利益は、前期に比べ41億円増益の52億円となった。

 川崎重工グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業、CO2分離・回収事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を新たなソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA」も活用しながら着実に進めている。更に、地震や豪雨などにより甚大な被害を受けた被災地の復興支援に協力するとともに、今後可能性が高まる様々な自然災害へ対応できる支援パッケージの充実に努めている。

 なお、川崎重工グループの潜水艦修繕職場における不適切事案及び舶用エンジンにおける検査不正については、社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会、並びに外部有識者で構成するそれぞれの特別調査委員会を設置し、昨年12月及び2025年1月にそれぞれの特別調査委員会より個々の事案における事実関係の調査や原因分析等に関する中間報告書を受領し、その内容を公表した。特別調査委員会の調査は継続中です。引き続き、川崎重工グループとして、コンプライアンス・ガバナンス体制の再構築や企業風土の改革に取り組んでいく。 本件による業績への影響については、今後の調査結果を踏まえ、影響が見込まれる場合には速やかに業績見通しへ反映していく。

■ 今後の見通し
 2026年3月期の連結業績については、売上収益は航空宇宙システム事業における防衛省向けや民間航空機製造分担品の増加及びパワースポーツ&エンジン事業における四輪販売の増加により、前期比1,807億円増収の2兆3,100億円(前年度比8.5%増)となる見通し。
 事業利益は為替変動による減益があるものの、エネルギーソリューション&マリン事業を中心とした利益率改善の取組が進んでいることに加え、精密機械・ロボット事業の市況回復により、前期比19億円増益の1,450億円(同1.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は820億円(同6.8%減)、税後ROICは6.9%、ROEは11.0%となる見通し。
 連結受注高は、航空宇宙システム事業、車両事業における前年度の大型受注の反動により前期比4,307億円減少の2兆2,000億円(同16.4%減)となる見通し。

 なお、米国関税政策の影響については、主としてパワースポーツ&エンジン事業に生じる見込みだが、政策動向や経済情勢が先行き不透明であることから、業績予想には含めていない。
 為替レートは、1ドル=140円、1ユーロ=155円を前提としている。

 川崎重工業の2025年3月期決算短信

 決算説明資料