三菱ロジスネクスト、24年度売上は5.2%減の6,656億円、25年度予想は1.4%増の6,750億円

 三菱ロジスネクストが5月9日に発表した2025年3月期 (2024年度)連結業績によると、売上高は、価格適正化効果や為替の円安影響があったものの、北米でのエンジン認証遅延による影響に加えて、代理店における在庫調整もあり、6,655億9千4百万円(前年同期比5.2%減少)となった。利益面では、米州での売上減少の影響が大きく、営業利益は207億6千6百万円(同51.3%減少)、経常利益は148億6千万円(同60.3%減少)となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、固定資産の譲渡に伴う売却益が計上されたが、中国販売子会社の譲渡に伴う売却損、国内エンジン製造子会社において固定資産の減損損失及び北米での認証遅延にかかる偶発損失に備えるための引当金を計上したこともあり、86億6千4百万円(同68.5%減少)となった。
 なお、のれん等償却の影響を除くと、営業利益は310億8千1百万円(同41.2%減少)、営業利益率は4.7%(同2.9ポイント減)となった。

 2024年度における世界経済は、緩やかではあるものの安定して成長してきた。地政学的緊張が続く中、世界的にはディスインフレが進展しているが、地域によって濃淡があり金融政策を難しくしている。米国の景気は安定した内需のもと底堅く推移してきており、欧州も堅調な内需を背景に緩やかに回復傾向にある。一方で、中国は不動産不況を始めとして内需が依然低迷を続けている中、輸出は米国による関税引き上げ前の駆け込み需要で一時的に伸長を見せたものの、先行きは不透明なものとなってきている。加えて、長期化しているウクライナ侵攻や不安定な中東情勢といった地政学的リスクもあり、景気の動向は地域ごとに様々な様相を呈している。一方、我が国経済は、好調なインバウンド需要や物価上昇に対応した価格転嫁の進展などもあって企業の景況感は良好、設備投資も依然として堅調に推移しており、賃金の伸びも拡大基調で景気は緩やかに持ち直している。世界経済はここまで緩やかに成長してきたが、米国新政権の二転三転する関税政策に翻弄されながらインフレ並びに景気減退の懸念が高まり、また、それらが中国を筆頭にグローバルでサプライチェーンに対するリスクを増大させ、金利や為替の動向、長期化する地政学的リスクなどにより、世界経済の先行きは、より一層不確実性を増し、益々不透明で予断を許さない状況となっている。

 このような中、フォークリフトを始めとする物流機器市場は、国内においては、引き続き安定的・堅調に推移している。一方、海外においては、米州では代理店在庫の調整局面が想定よりも長引き、卸売需要も弱含みに推移していたが、その局面も徐々に解消しつつある。欧州は緩やかではあるものの回復基調にあり、アジアも在庫調整局面からか一時伸長が鈍化しながらも堅調に推移、中国においては景気減速にあっても物流機器需要は堅調。ただし、需要堅調な物流機器市場も、電気車化が進む中でリチウムイオンバッテリー車を始めとした中国製品の台頭により、特に欧州・アジアにおける競争は一層厳しいものとなっており、加えて米国の関税政策が投資意欲を減退させ、堅調だった物流機器需要に影響を及ぼすことも危惧されている。

 同社においては、課題であったリードタイムを正常化させ、価格適正化による収益性の改善を進めながら、安心・安全、自動化・自律化、脱炭素といった物流機器市場のニーズの高まりにも応えている。そのような中、最重要市場といえる米国においては、エンジン認証課題への対応として新型エンジン搭載車への置き替えを完了し引き続き挽回に努めている。しかしながら、米国新政権下での関税を始めとした政策次第ではグローバルでのコストアップも懸念され、同社事業における今後の見通しを困難なものにしている。

 三菱ロジスネクスト2025年3月期通期データ

■セグメントごとの経営成績
 〔国内事業〕
 国内事業は、受注が堅調に推移する中、価格適正化の効果もあって、売上高は1,961億8千6百万円(前年同期比3.0%増加)となった。セグメント利益は、輸出における円安影響に加え、堅調な国内販売における価格適正化の効果の寄与もあり、56億6千2百万円(同11.9%増加)となった。
 なお、のれん等償却の影響を除くと、セグメント利益は103億1千5百万円(同4.2%増加)となった。

〔海外事業〕
 海外事業は、為替の円安影響はあったものの、北米での一時出荷停止の影響に加え、地域によっては代理店の在庫調整の長期化もあり、売上高は4,694億8百万円(前年同期比8.2%減少)となった。セグメント利益は、欧米での売上減少の影響が大きく、151億4百万円(同59.8%減少)となった。
 特に海外事業の前年同期は、部品欠品が解消されていく中で生産を拡大、出荷を促進し、加えて価格適正化の寄与もあり、売上高並びにセグメント利益を大きく伸長させた。それに反して当期は、北米でのエンジン認証遅延に伴い旧型エンジンの換装などに追加工数を要して生産効率の悪化を招き、また、エンジン認証遅延に起因する新型エンジンへの切り替えに伴う生産部品及び製品の廃却損失、評価損の計上などの一時費用の発生もあった。さらに、代理店の在庫調整の影響もあったため、売上高、セグメント利益ともに減少している。
 なお、のれん等償却の影響を除くと、セグメント利益は207億6千6百万円(同51.7%減少)となった。

■今後の見通し
 世界経済が緩やかながら安定して成長する中で、フォークリフトを始めとする物流機器市場は、国内においては引き続き堅調に推移し、海外においても堅調あるいは地域によっては回復してきていたが、米国の関税を初めとした政策次第ではグローバルでのコストアップが懸念され、世界経済への影響も含め、同社事業の今後の見通しを困難なものにしている。

 このような状況の中、米国事業においては、関税政策による生産コストの悪化を製品価格に転嫁可能であることを前提とし、販売台数については10%の需要下振れ影響を想定のもと、2025年度(2026年3月期)の連結業績については、売上高6,750億円(前年度比1.4%増)、営業利益330億円(同58.9%増)、経常利益270億円(同81.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益170億円(同96.2%増)を見込んでいる。想定為替レートは、145円/米ドル、155円/ユーロとした。

 なお、2025年度末における自己資本比率は25%以上、資本コストを意識した経営の実現に向け中期経営計画「Logisnext Transform 2026」で新たに目標として設定した自己資本利益率は10%以上を見込んでいる。

 三菱ロジスネクストの2025年3月期決算短信