日立建機、24年度売上は2.5%減の1兆3,713億円、関税影響除く25年度予想は0.3%増の1兆3,750億円

・関税は需要予想含め織り込まず、仮想定では営業利益で300億円の影響

 日立建機が4月25日に発表した2025年3月期(2024年度)連結業績によると、売上収益は1兆3,712億8千5百万円(対前年度増減率△2.5%)と減収となった。利益項目については、原価低減や販売価格引き上げの継続、為替円安影響が利益の下支えとなった一方、市況悪化に伴う物量の減少等に加え、研究開発費・人件費等の成長投資や北米市場シェア拡大に向けた販売促進活動の積極展開に伴う費用が増加したことなどにより、調整後営業利益は、1,449億8千9百万円(同△13.7%)と減益。親会社株主に帰属する当期利益については、為替差損や支払利息の増加等により、814億2千8百万円(同△12.7%)となった。一方で、売掛債権や在庫の縮減等の取り組みによって、営業キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フローは前年同期比で増加した。

 日立建機グループは、2026年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「BUILDING THE FUTURE 2025 未来を創れ」のもと、①顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供、②バリューチェーン事業の拡充、③米州事業の拡大、④人・企業力の強化、の4つの経営戦略を掲げて持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいる。

 2024年度は、金利の高止まり等の影響を受けて油圧ショベル新車需要の減少が見られた北米や欧州を中心に、前年同期比で売上収益が減少した。独自展開事業に注力する米州では、最終顧客向けのリテール販売に基づく北米市場シェアが前年同期比で増加したものの、需要減少を背景に代理店在庫の積み上げが一服したことなどにより、売上収益が前年同期比で減少した。しかし、新車需要が弱含む中でも、底堅いメンテナンス需要を背景に、注力してきた部品サービス事業は堅調に推移している。
 
 なお、2024年3月期第4四半期より、IFRS会計基準に即して、スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスセグメントにおけるノンコア事業を非継続事業に分類。これにより、2024年度及び2023年度について、売上収益、調整後営業利益、営業利益、税引前当期利益は非継続事業を除いた継続事業の金額を表示し、当期利益及び親会社株主に帰属する当期利益は、継続事業及び非継続事業の合算を表示している。

 日立建機2025年3月期通期データ

■セグメントの業績
①建設機械ビジネス
 2024年度における売上収益は1兆2,440億円(同△3.0%)、調整後営業利益は1,298億5千6百万円(同△15.4%)となった。コンストラクション向け・マイニング向けともに、部品・サービスの提供を中心としたバリューチェーン事業は好調に推移したが、北米・欧州などでの物量減少に加え、研究開発費や人件費、注力する米州市場における販売促進活動費用等が増加したこと等により、減収減益となった。

②スペシャライズド・パーツ・サービスビジネス
 同事業は、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を行うBradken Pty Limited及びその子会社と、サービスソリューションを提供するH-E Parts International LLC及びその子会社で構成されている。
 2024年度における売上収益は1,356億4千2百万円(同4.4%)、調整後営業利益は151億3千3百万円(同4.4%)と、増収増益となった。これは、主に2024年12月にH-E Parts International LLCが米国Brake Suply Co., INC.の事業を買収した影響等によるもの。

 なお、上記、①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値。

■今後の見通し 

 2026年3月期(2025年度)連結業績予想は、売上収益1兆3,750億円(前期比0.3%増)、調整後営業利益1,510億円(同4.1%増)、税引前当期利益1,350億円(同0.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益830億円(同1.9%増)。


  2026年3月期においても、依然として続く金利高の影響等により、北米を中心に厳しい新車販売環境が継続するものと見込む。一方で、足元では東南アジアで新車需要が持ち直しつつある。マイニングの分野では、世界経済の減速に伴い石炭、鉄鉱石などの資源価格動向が不透明である一方、銅価格は引き続き堅調に推移している。こうした状況を踏まえ、マイニング製品の新車需要は全体的に減少を見込む一方、稼働機のメンテナンス需要は引き続き堅調に推移するものと見込む。

 新車需要の減少やインフレ影響による資材費増加など厳しい事業環境は継続しているが、原価低減及び販売価格の引き上げ等の推進に加え、部品サービスを中心としたバリューチェーン事業が堅調で収益を下支えしている。

 これらを勘案し、2026年3月期連結業績予想においては売上収益、調整後営業利益においてそれぞれ前年同期比で若干の増加を見込んだ。前年度において、その他営業収支の一過性の改善が含まれていたことから、営業利益は減益となるが、親会社株主に帰属する当期利益は増益を見込んでいる。

 日立建機を取り巻く事業環境は、不透明感を増しているが、上記業績見通しを前提とし、業績に一定程度の改善が見込まれることや安定的にキャッシュを創出している近状況にも鑑み、2026年3月期においては、前年同等となる1株当たり175円の年間配当を計画している。

 日立建機は、米州独自事業、マイニング事業、バリューチェーン事業の拡大に注力している。特に2024年度は、丸紅とのブラジルにおけるマイニング機械販売・サービス会社の設立、チリにおける中南米地域統括会社の設立など、中南米地域でのマイニング事業拡大を加速する施策を実行してきた。今後も注力事業の持続的な成長を図ることで、引き続き新車需要に左右されにくい安定的な収益体質への転換を進めていく。
 
 なお、業績見通しの前提となる為替レートについては、米ドル145円、ユーロ155円、人民元19.9円、豪ドル94円としている。

■米国の相互関税の影響について

 米国の相互関税の影響に関しては、実施に至る時期など不確定要素も多いことから、今回の見通しには需要予測も含めて織り込んでいない。ただ外数として現段階で暫定的にリスクを見積もっている。

 日立建機の米国向け事業(24年度北米売上:3,124億円、うち米州全体の独自展開2,102億円)は完成品と部品の輸出が大半を占め、第3国からの輸出事業にはほとんど影響がない。

 また、米国のディア社向けOEM供給事業は、相手先が関税分を負担する契約条件となっていることから原則的には影響を受けない。

 つまり、現段階での関税実施による影響額は、2025年度に日本から米国向けに出荷する対象製品の追加課税総額として300億円程度と想定。一方で、販売価格への転嫁やレンタルビジネスの強化、原価低減等の対応策を講じていくことで、インパクトの極小化を図っていくとしている。


 日立建機の2025年3月期決算短信

 決算説明資料