竹内製作所が4月11日に発表した2025年2月期(2024年3月〜25年2月、2024年度)の売上高は、販売台数は前年度を下回ったが、円安影響と製品価格の値上げ等により、過去最高の2,132億3千万円(前年度比0.3%増)となった。また、米国関税政策の影響を見込まない次期予想は5.5%増の2,250億円とした。
竹内製作所グループは第三次中期経営計画(2023年2月期から2025年2月期まで)において、①人的資本への投資、②製品開発のスピードアップ、③生産能力の増強、④販売網の拡充とアフターパーツの拡販、⑤サステナビリティ経営の推進を重点施策として取り組んだ。2022年9月からセミノックダウン方式によりクローラーローダーの生産を開始した米国サウスカロライナ州の工場に続き、2023年9月に長野県小県郡青木村の青木工場において、4トンから9トンのミドルクラスのショベルの生産を開始した。今中期経営計画での生産能力目標を2024年8月末に達成し、既存の本社工場と合わせた生産能力は概ね1.5倍となった。また、2024年7月にはホイール式油圧ショベル「TB370W」を市場投入し、新製品を加えた豊富な製品ラインナップで、市場シェアの拡大に取り組んだ。
今中期経営計画の最終年度となる2025年2月期の連結会計年度(2024年3月1日から2025年2月28日まで)における販売台数は、主に欧州市場での建設機械の需要減速により、前年度を下回った。
北米では、住宅ローン金利と住宅価格の高止まりにより、新築住宅の着工件数は調整局面が継続していることに加え、関税引き上げの影響が懸念されるなど先行き不透明感が強まった。第4四半期で主力製品の販売が落ち込んだ影響により、前年度比で販売台数は減少した。欧州では、低調な経済環境が継続し、建設機械のみならず全般において投資意欲が減退している。クローラーローダーの販売は順調に推移したが、国ごとに差はあるもののミニショベル及び油圧ショベルの販売が低調に推移したため、販売台数は前年度を大きく下回った。
2024年度の受注高は1,627億5千万円(前年度比7.9%増)となった。受注高が前年度比で増加しているが、これは主に第4四半期において、米国販売子会社のディーラーからの受注が増加したことによるもの。年度末の受注残高は、前年度末に比べ504億7千9百万円減少し、784億1千7百万円となった。 以上により、2024年度の販売台数は前年度を下回ったが、円安影響と製品価格の値上げ等により、売上高は過去最高の2,132億3千万円(前年度比0.3%増)となった。
利益面においては、部品調達価格の上昇や原材料棚卸資産の評価減、2023年9月に稼働開始した青木工場の減価償却費や労務費等の減益要因はあったものの、円安影響、製品価格の値上げ等の増益要因により、営業利益は371億4千2百万円(同5.2%増)となり、経常利益は356億8百万円(同0.4%増)となった。
なお、原材料棚卸資産の評価減については、電池式ショベルの売れ行きが想定を大きく下回っており、販売拡大を見越して先行手配したバッテリー等の関連部品が滞留在庫となったため、簿価を26億5千9百万円切り下げたことによるもの。親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用を94億9千5百万円計上したことにより、261億1千3百万円(同0.1%減)となった。
■セグメント別の経営成績
(日本) 日本セグメントは、売上高のほとんどが欧州ディストリビューター向けの販売で占められている。欧州では、住宅ローン金利の高止まりとエネルギー価格をはじめとした生活費の高騰により住宅需要が低迷しており、建設投資などの非住宅関連の建設工事需要も軟化している。このような環境下、欧州ディストリビューター向けの販売台数は前連結会計年度を大きく下回り、売上高は671億3千3百万円(前年度比11.0%減)となった。セグメント利益は、製品価格の値上げ、及び円安影響等により343億5百万円(同11.7%増)となった。
(米国) 米国セグメントでは、住宅ローン金利と住宅価格の高止まりにより新築住宅の着工件数は調整局面が継続していることに加え、次期大統領による関税及び通商政策の見極め等により、投資に対して慎重な姿勢が強まった。このような環境下、製品購入時期を見合わせる動きがあり、製品販売が第4四半期で落ち込み、前年度比で販売台数が減少したが、製品価格の値上げ、及び円安影響等により、売上高は1,201億3百万円(前年度比4.3%増)となり、セグメント利益は109億1千1百万円(同0.4%増)となった。
(英国) 英国セグメントでは、住宅ローン金利の高止まりとエネルギー価格をはじめとした生活費の高騰が住宅需要を押し下げていたが、インフレ率の低下にともない個人消費に回復の兆しがみられたことや、販売促進のための値下げを実施したことも奏功し、前年度比で販売台数が増加した。このような環境下、円安影響等もあり、売上高は145億4千7百万円(前年度比19.9%増)となり、値下げを実施したこと等により、セグメント利益は4億9千9百万円(同45.2%減)となった。
(フランス) フランスセグメントでは、住宅ローン金利の高止まりとエネルギー価格をはじめとした生活費の高騰が住宅需要を押し下げていることに加え、低調な経済環境の継続により建設機械のみならず全般において投資意欲が減退している。このような環境下、販売促進のための値引きにより製品の販売台数は前年度を上回ったことに加え、円安影響等もあり、売上高は113億2千5百万円(前年度比15.6%増)となり、本社からの仕切り価格の値上げにより、セグメント利益は8億1千6百万円(同16.1%減)となった。
(中国) 中国セグメントは、日本セグメントに向けた建設機械の部品の製造・販売が事業の大半であり、外部顧客への売上高は1億2千万円(前年度比6.5%増)となり、セグメント利益は2億9千7百万円(同113.2%増)となった。
■今後の見通し
文中の将来に関する事項は、米国の関税政策による影響を見込んでいない。なお、米国関税政策の影響は不透明な状況にあるが、米国での販売台数が2025年2月期を10%下回り(2026年2月期の販売台数予想に対して21.4%減)、24%の関税コストを価格転嫁できずに全てを同社グループで吸収すると仮定した場合、連結売上高は240億円、連結営業利益は130億円、以下の予想より下振れする可能性があるとしている。
現時点での2026年2月期連結業績予想は、売上高は2,250億円(前年度比5.5%増)、営業利益は420億円(同13.1%増)、経常利益は410億円(同15.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は292億円 (同11.8%増)。
コメントを投稿するにはログインしてください。