川崎重工 、24年4〜9月売上収益は14.9%増の8,842億円 、24年度予想は2兆1,800億円(17.9%増)に下方修正

 川崎重工業が11月8日に発表した2025年3月期第 2四半期(4〜9月)業績によると、連結受注高は前年同期比345億円増加の8,953億円、連結売上収益は前年同期比1,148億 円増収の8,841億円、事業損益は前年同期比806億円改善して477億円の利益、税引前中間損益は前年同期比582億円 改善して237億円の利益、親会社の所有者に帰属する中間損益は前年同期比370億円改善して136億円の利益となった。

 世界経済は、米国では雇用情勢の軟化はあるものの堅調な個人消費に支えられて底堅く推移しているが、長期 化する中国経済の停滞や地政学リスクの増大等の懸念、米国大統領選挙による経済影響等、先行きは依然として不 透明な状況。

 国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等に加え、実質賃金の改善 に伴う個人消費の持ち直しにより、内需主導で緩やかな景気回復が持続すると見込まれる。一方、海外景気の下振れリスクや日銀の追加利上げ、それに伴う為替相場の変動など経済への影響には注視が必要。

 このような経営環境の中で、中間期における同社グループの連結受注高は、エネルギーソリューシ ョン&マリン事業などで減少となったものの、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業などでの増加によ り、全体でも増加となった。連結売上収益については、航空宇宙システム事業、エネルギーソリューション& マリン事業、精密機械・ロボット事業などでの増収により、全体でも前年同期比で増収となった。

 利益面に関しては、事業損益は、パワースポーツ&エンジン事業での減益はあったものの、航空宇宙システム事 業、精密機械・ロボット事業での改善などにより前年同期比で改善となった。親会社の所有者に帰属する中間 損益は、事業損益の改善などにより、前年同期比で改善となった。

 川崎重工2025年3月期第2四半期データ

■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
 航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、引き続き需要増が期待される。民間航空機については、今後ボーイング社でのストライキの影響等が懸念 されますが、航空旅客需要は昨年度から需要が増加し、大幅に回復している。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けの減少はあるものの、民間航空エンジンの運航上の問題 にかかる損失を計上した前年同期に比べ167億円増加の2,099億円となった。
 連結売上収益は、民間航空エンジンの運航上の問題にかかる損失を計上した前年同期に比べ、防衛省向けや民間 航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、1,049億円増収の2,341億円となった。 事業損益は、増収などにより、前年同期に比べ781億円改善して253億円の利益となった。
<車両事業>
 車両事業を取り巻く経営環境は、インバウンドの復調等により鉄道乗客数は新型コロナ影響前の約9割まで回復 しており、国内の鉄道車両への投資は再開されつつある。一方で、電子部品を中心とした機器調達の長期化や 物価高騰の影響には注視が必要。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄 道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、前年同期に比べ22億円減少の278億円となった。
連結売上収益は、国内・アジア向けが減少したものの、米国向けが増加したことなどにより、前年同期に比べ29 億円増収の870億円となった。
 事業利益は、増収などにより、前年同期に比べ13億円増益の16億円となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
 エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す動きの影響を強く受け、同社が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。また、国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性 など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費の高止まり等による受注、売上収益へ の影響には注視が必要。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、LPG/アンモニア運搬船を受注したものの、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や産業用ガスタービン機器の減少などに伴い前年同期に比べ73億円減少の2,110億円となった。
 連結売上収益は、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や防衛省向け艦艇用機器での増収などにより、 前年同期に比べ121億円増収の1,599億円となった。
 事業利益は、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前年同期に比べ35億円増益の120億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
 精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、欧米市場を中心に若干の陰りが見えるもの の、不動産不況の長期化等の影響で需要の減速が続いていた中国建設機械市場は、小型機を中心に下げ止まりの兆しが見えつつある。ロボット分野では、半導体メモリ市場の価格と需要が底を打ち、AI関連等の新たな成長を取り込みつつ、前年度の後半から半導体製造装置向けロボットの需要が回復している。一方で、一般産業用ロボ ットは、最大の需要国である中国の景況が依然として低調だが、人件費上昇や労働力不足による自動化需要は確 実に高まっている。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボットが増加したことなどにより、前年同期に比べ216億円増加の1,246億円となった。
 連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや精密機械分野での増収を主要因として、前年同期に比べ64億円増収の1,094億円となった。
 事業損益は、増収による増益に加え、これまで進めて来た価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前年同期に比べ65億円改善して19億円の利益となった。
<パワースポーツ&エンジン事業>
 パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である米国と欧州では二輪車の需要は堅調に推 移しているが、一方で四輪車は軟調傾向にある。東南アジア市場は一部では回復が見られるが、依然とし て低い水準で推移しており、また中国市場では景気悪化の影響から需要が減少している。
 このような経営環境の中で、連結売上収益は、二輪車の増加と円安が収益を押し上げたものの、北米向け四輪車 がリコールや生産遅延等の影響で一時的に減少したことにより、前年同期に比べ138億円減収の2,533億円となった。
 事業利益は、減収や固定費の増加などにより、前年同期に比べ82億円減益の149億円となった。
<その他事業>
 連結売上収益は、前年同期に比べ22億円増収の401億円となった。 事業利益は、前年同期に比べ10億円増益の16億円となった。

 川崎重工業グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来 モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、 配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素・大型CO2回収事 業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めている。
 更に、地震や豪雨などにより、甚大な被害を受けた被災地の復興への支援に協力するとともに、今後可能性が高まる様々な自然災害 へ対応できる支援パッケージの充実に努めている。

■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明

 2025年3月期連結業績は、売上収益2兆1,800億円(前期比 17.9%増)、事業利益1,300億円(同181.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益730億円(同187.7%増)。
 連結受注高は、パワースポーツ&エンジン事業における北米向け四輪車の販売減による影響があるものの、エネ ルギーソリューション&マリン事業のLPG/アンモニア運搬船の受注増加等により前回公表値から200億円増加の2兆 4,300億円となる見通し。

 2025年3月期の連結業績については、航空宇宙システム事業における民間エンジンの採算性改善やエネルギーソリューション&マリン事業における船舶海洋事業の持分法投資利益の増加がある一方、ボーイング向け分担製造品の販売計画見直しや、パワースポーツ&エンジン事業における北米向け四輪車の販売減により、売上収益は前回公表値から700億円減収の2兆1,800億円、事業利益は前回公表値据え置きの1,300億円となる見通し。

 実勢レートと前提為替レートの差の影響等を金融損益に反映し、税引前利益は前回公表値から150億円減益の950 億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前回公表値から50億円減益の730億円を見込むものの、連結配当性向を 勘案し、年間配当金予想は140円を据え置く。なお、税後ROICは6.5%、ROEは11.2%となる見通し。
 業績予想における為替レートは、1ドル=140円、1ユーロ=150円を前提としている。

 川崎重工業の2025年3月期第 2四半期決算短信

 第 2四半期決算説明資料