・無線ネットワークのリアルタイム予測と最適制御により、遮蔽物や通信量の増加に対応
日本電気 (NEC)は9月6日、倉庫や工場における自動搬送ロボット(AGV:Automatic Guided Vehicle)を遠隔制御する際に、無線通信の遅延を抑えて安定化することでAGVの停止や不安定な稼働を回避し、高い作業効率を実現する技術を開発したと発表した。
昨今、国内では労働人口の減少が続いており、倉庫や工場などの作業現場では慢性的な人手不足が大きな課題となっている。こうした状況を受けて、NECでは作業現場の生産性を向上するために、AGVを活用したソリューションの開発・商用化を進めている。
AGVには自律的に稼働するものと、遠隔地やクラウド上のサーバから制御するものがある。遠隔制御の場合、現場の無線ネットワークを通じてAGVの状態認識および制御データの配信、搭載カメラで撮影した周辺映像の配信などを行う。この際、柱・壁・設備などの遮蔽物や移動の影響で通信品質が低下し、円滑な制御に必要となる通信の遅延要件を超過することがある。また、映像データや制御データなど通信トラフィックが混在し無線リソースの競合(順番待ち)が発生することで、通信遅延が変動することがある。これらはAGVの稼働停止や状態認識・制御の不安定化を引き起こすが、複数の無線ネットワークで繋がりやすい環境を構築することで、ある程度防ぐことができる。しかし、通信量が増大しアクセスが集中(輻輳)すると、通信の断絶や遅延が発生し、制御が不安定になることが課題。
これらの課題に対して、NECが開発した技術は以下のとおり。
1.通信品質の変動を予測し最適な無線ネットワークに切り替えることで、AGVの停止を回避
通信の状態をパケット単位でリアルタイムに分析し、変動する通信品質を予測した上で、最も遅延が少ない無線ネットワークに切り替える技術を開発した。これにより、品質の良いネットワークに接続し続けることができるため、通信遅延を抑え、AGV制御における通信の遅延要件の超過を避けることで、稼働停止を回避できるようになる。
2.通信トラフィックの制御により、AGVの安定稼働を実現
無線リソースの競合や通信品質の低下により、通信遅延の変動が発生する。これは、AGVの急発進・急停止や、搭載カメラ映像の乱れなど不安定な稼働の原因となる。
そこでNECは、あらかじめ設定したデータの内容や、要求される通信性能の要件(帯域、通信遅延および遅延の変動など)に応じてデータの送信タイミングを調整する、通信トラフィックの制御技術を開発した。これにより例えば、映像データはAGVの稼働に影響のない範囲で遅延を許容しつつ、制御データは優先して送ることで、AGVの安定稼働を実現する。
NECは同技術について、2024年度中に実際の倉庫で実証実験を行い、2025年度の実用化を目指す。同技術は、遠隔地のサーバがロボットの監視や制御を行う、あらゆるシステムに適用が可能。将来的には、自動運転の遠隔管制、ドローンの遠隔操縦、建設機械の遠隔制御など、様々なシステムの安定稼働に貢献する。
なおNECは同技術を、「国際物流総合展2024」 (会期:9月10日(火)~13日(金)、会場:東京ビッグサイト)において紹介する。
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