・最新鋭の生産設備を導入し生産能力を増強、水素関連新規需要への展開もにらむ
㈱クボタは8月8日、枚方製造所(大阪府枚方市)の既存の反応管生産設備のうち溶解・鋳造設備をすべて最新鋭の設備に置き換えると発表した。2023年9月に発表した生産能力増強のための生産ラインの増設と合わせて2030年までに溶解・鋳造能力を現在の約230%まで引き上げ、石油化学市場の旺盛な需要に対応するとともに、世界的なカーボンニュートラルの流れの中で需要拡大が見込まれる水素関連の新規市場への展開に備え、生産体制を強化する。
■反応管とは
反応管は、石油由来原料の熱分解や改質などの工程で使用される耐熱鋳鋼製のパイプで、過酷な使用環境に応じた耐熱性や耐食性などが求められる。
クボタが製造・販売する反応管の代表的な製品に「クラッキングコイル」と「リフォーマーチューブ」がある。クラッキングコイルは石油化学プラントにおいてエタンやナフサなど石油由来の物質を高温で熱したときに起こる「熱分解」という反応によって合成樹脂の原料であるエチレンやプロピレンを製造する工程などで使用される。リフォーマーチューブは石油精製プラント等で天然ガスなどを高温・高圧にして工業用水素を取り出す「改質」という工程で使用される。
クボタはクラッキングコイルの中でも管内面に設けた特殊ならせん状の突起が管内を通る流体ガスを攪拌・混合し、プラントの生産性向上に寄与する「MERT」や、内面に特殊な被膜処理を施し長寿命化を実現した「AFTALLOY」など、独自の高機能製品に強みがあり、反応管の世界シェアは1位。
また、クボタの反応管の開発ノウハウと製造技術は、アンモニアを熱分解して水素を製造する設備や、CO2排出の大幅削減が期待される水素還元製鉄のプラントなど、カーボンニュートラルの流れの中で今後市場形成が見込まれる新たな水素関連用途のパイプへの活用が期待されている。
■背景とねらい
新興国の経済発展や人口増加を背景にエチレンの需要は旺盛で、アジアを中心とする新規プラント建設や北米での既設プラントの更新などによりクラッキングコイルの需要は引き続き拡大することが見込まれる。
国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の見通しでは世界全体の水素需要は2040年に1億3650万t/年に達するとされている。日本国内でも2023年に改定された水素基本戦略において年間供給量を2030年に300万t/年、2040年に1200万t/年、2050年に2000万t/年とする目標が掲げられ、現在の推定約200万t/年からの大幅な拡大が期待できる。そのような環境下、今後大規模な水素関連のプラント建設が見込まれる。
クボタは2023年9月に増産投資を決定し生産ラインの増設を進めているが、今回の追加投資により既存の溶解・鋳造設備を最新鋭の設備に置き換え、石油化学市場の旺盛な需要に対応するとともに、水素関連市場の新たな需要を取り込み、より持続可能で強靭な事業体質をめざす。
<設備投資の概要>
内容:溶解設備(電気炉等)及び鋳造設備等の新鋭化、工場建屋の補強
時期:2025年着工予定(稼働開始予定 2030年)
投資額:約100億円(うち溶解・鋳造設備の新鋭化投資は約40億円)