川崎重工 、24年4〜6月売上収益は9.6%増の4,442億円 、24年度予想2兆2,250億円(21.7%増)は据え置き

 川崎重工業が8月6日に発表した2025年3月期第1四半期(4〜6月)業績によると、連結受注高は前年同期比4億円減少の4,568億円、連結売上収益は前年同期比388億円増収(9.6%増)の4,442億円、事業利益は前年同期比66億円増益(65.7%増)の169億円、税引前四半期利益は前年同期比109億円増益(73.2%増)の258 億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比62億円増益(70.0%増)の153億円となった。

 世界経済は、米国ではインフレ率の低下や労働市場の需給が緩和傾向にあるものの個人消費を中心に堅調さを維持しているが、不動産不況が長期化する中国経済の回復時期や地政学リスクの増大等の懸念、米国大統領選挙に よる経済影響等、先行きは不透明な状況が続いている。

 国内においては、足下では物価高の影響もあり個人消費の回復ペースに弱さが見られるものの、雇用・所得環境の改善や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等により、緩やかな景気回復が続くことが期待される。一方、 海外景気の下振れリスクや日銀の政策変更による金利の上昇、それに伴う為替相場の変動など経済への影響には注視が必要。
 このような経営環境の中で、第1四半期における同社グループの連結受注高は、エネルギーソリ ューション&マリン事業、精密機械・ロボット事業などで増加となったものの、航空宇宙システム事業での減少により、全体では前年同期並みとなった。連結売上収益については、航空宇宙システム事業、エネルギーソリュ ーション&マリン事業、精密機械・ロボット事業などでの増収により、前年同期比で増収となった。

 利益面に関しては、事業利益は、パワースポーツ&エンジン事業での減益や車両事業での悪化はあったものの、 航空宇宙システム事業での増益、精密機械・ロボット事業での改善などにより、前年同期比で増益となった。 親会社の所有者に帰属する四半期利益は、事業利益の増益により増益となった。

■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
 航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、引き続き需要増が期待される。民間航空機については、航空旅客需要は回復から成長のフェーズに移行し、機体・エンジンともに需要が増加している。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品などが増加したものの、防衛省向け大型案件の受注があった前年同期に比べ、305億円減少の882億円となった。
 連結売上収益は、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、前年同期に比べ247億円増収の1,049億円となった。
事業利益は、増収などにより、前年同期に比べ95億円増益の48億円となった。

<車両事業>
 車両事業を取り巻く経営環境は、インバウンドの復調等により鉄道乗客数は新型コロナ影響前の約9割まで回復しており、国内の鉄道車両への投資は再開されつつある。一方で、電子部品を中心とした機器調達の長期化や物価高騰の影響には注視が必要。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、前年同期に比べ6億円増加の170億円となった。
 連結売上収益は、国内・アジア向けが減少したものの、米国向けが増加したことなどにより、前年同期に比べ3 億円増収の438億円となった。
 事業損益は、間接費配賦率の見直しを第1四半期に実施した影響で費用が集中(通期では影響無し)したことなど により、前年同期に比べ14億円悪化して14億円の損失となった。

<エネルギーソリューション&マリン事業>
 エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す動きの影響を強く受け、同社が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。また、国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費の高止まり等による受注、売上収益へ の影響には注視が必要。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け艦艇用機器などの減少はあったものの、LPG/アンモニア 運搬船を受注したことに伴い前年同期に比べ195億円増加の1,218億円となった。
 連結売上収益は、防衛省向け艦艇用機器での増収を主要因として、前年同期に比べ94億円増収の801億円となった。
 事業利益は、増収はあったものの、期間費用の増加などにより、前年同期並みの59億円となった。

<精密機械・ロボット事業>
 精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、欧米市場を中心に若干の陰りが見えるもの の、不動産不況の長期化等の影響で需要の減速が続いていた中国建設機械市場は、小型機を中心に下げ止まりの兆 しが見えつつある。ロボット分野では、半導体メモリ市場の価格と需要が底を打ち、AI関連等の新たな成長を 取り込みつつ、前年度の後半から半導体製造装置向けロボットの需要が回復している。一方で、一般産業用ロボ ットは、最大の需要国である中国の景況が依然として低調だが、人件費上昇や労働力不足による自動化需要は確 実に高まっている。
 このような経営環境の中で、連結受注高は、半導体製造装置向けロボットの需要が増加したことなどにより、前年同期に比べ76億円増加の616億円となった。
 連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや精密機械分野での増収を主要因として、前年同期に比べ33億円 増収の526億円となった。
事業損益は、増収による増益に加え、これまで進めて来た価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前年同 期に比べ24億円改善して1億円の損失となった。

<パワースポーツ&エンジン事業>
 パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、主要市場である米国と欧州では競合メーカーの積極的な商品供給により市場競争は激化しているが、需要は堅調に推移している。東南アジア市場は一部では回復傾向が見られるが、依然として低い水準で推移しており、また中国市場では景気悪化の影響から需要が減少している。
 このような経営環境の中で、連結売上収益は、北米向け四輪車等が出荷遅れなどの影響で一時的に減少したものの、二輪車の増加と、為替レートが円安に推移し収益を押し上げたことにより、前年同期並みの1,447億円となった。
 事業利益は、固定費の増加により、前年同期に比べ27億円減益の115億円となった。

<その他事業>

 連結売上収益は、前年同期に比べ3億円増収の178億円となった。 事業利益は、前年同期並みの7億円となった。

 同社グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来 モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、 配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素・大型CO2回収事 業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めている。
 更に、能登半島地震の被災地のいち早い復興への支援に協力するとともに、今後可能性が高まる様々な自然災害 へ対応できる支援パッケージの充実に努めている。

■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
 2025年3月期の連結業績については、受注系事業が堅調に推移していることに加え、精密機械・ロボット事業で下期に向けて半導体製造装置向けロボットの需要回復が見込まれること、パワースポーツ&エンジン事業で供給の回復が進むなど想定通りに進捗していることから、下記の前回(5月9日)公表値を据え置いた。
 2025年3月期連結業績は、売上収益2兆2,500億円(前期比 21.7%増)、事業利益1,300億円(同181.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益780億円(同207.4%増)。
 なお、連結受注高は、航空宇宙システム事業を中心として防衛省向けの受注増により、前回公表値500億円増加の2兆 4,100億円となる見通し。

なお、業績予想における為替レートは、1ドル=140円、1ユーロ=150円を前提としている。

川崎重工業の2025年3月期第1四半期決算短信

 第1四半期決算説明資料