鹿島、山岳トンネル工事における「ずり出し」を自動化・無人化

・ホイールローダの自動運転を核としたずり出しの安全性向上と省人化の実現

 鹿島建設は7月10日、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel 」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)の開発を進めているが、このほど、神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)での実証工事において、自動ホイールローダによるずり(岩砕)の掬すくい取りから運搬、荷下ろしまでの一連の作業を自動化することに成功したと発表した。同技術を遠隔操縦のバックホウと連携することで、切羽近傍の完全無人化が可能となり、大幅な省人化ならびに安全性の飛躍的な向上が実現する。

■開発の背景
 建設業界では、「熟練技能者不足」、「高い労働災害の発生率」、「低い生産性」が喫緊の課題であり、山岳トンネル工事も例外ではない。そこで鹿島は、これらの課題解決に向けて「A4CSEL for Tunnel」の開発を進めている。これは、山岳トンネル工事の掘削作業を、6つの施工ステップ①穿孔 ②装薬 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け ⑥ロックボルト打設 に分け、各ステップで使用する重機を自動化し、それらを一元管理する次世代の建設生産システム。

 このうち③ずり出しは、発破により切羽で発生したずりをホイールローダで掬い取り、そこから数十m程度後方に配置したダンプトラック等の搬送機械・装置に積み込む作業。標準的なトンネル工事では、発破で発生したずりを搬出するために、ホイールローダが切羽とダンプトラック等の間を発破1回あたり40~60回程度往復する必要がある。発破直後の切羽に近づくため危険でもあり、さらに狭隘かつ凹凸のある路盤上を走行するという作業環境と相まって、ずり出しは、技能者の心身への負担が大きな作業となっている。

 鹿島は2021年6月、模擬トンネル(静岡県富士市)において、自動ホイールローダによるずりの掬い取りからホッパー投入までの一連作業の自動化に成功した。一方、実トンネルでのずり出しの自動化には、切羽の位置や形状が都度変化するため、その状況に応じて接触を回避しつつ作業経路を確保するといった実際の工事特有の課題を解決していく必要があった。

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