・現在製作中の6基に続いて新たに12基を受注、ダイバータ全54基のうち18基の製作を担う
・イーター向け主要機器の製作・納入を通じて、核融合開発の着実な推進に貢献
・核融合実験炉イーター向けダイバータ外側垂直ターゲット
三菱重工業は5月20日、南フランスで建設中の核融合実験炉イーター(以下、ITER)(注1、2)に用いられる、ダイバータの重要な構成要素である「外側垂直ターゲット」12基の製作を、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)から新たに受注したと発表した。これまで培った高難度製作物の量産化技術が評価されたもので、2021年に受注した初回製作分6基(初号機~6号機)(注3)に続き、12基(7号機~18号機)を追加受注したことにより、全54基のうち量研発注済の18基全ての製作を三菱重工が担う。今回受注した12基は順次製作を完了し、2026年から量研に納品する予定。
ダイバータは、トカマク型装置を採用する核融合炉における最重要機器の1つであり、プラズマを安定的に閉じ込めるために、核融合反応で生成される炉心プラズマ中のヘリウム(He)などの燃え残った燃料や不純物を排出する役割を担う。
ダイバータの熱負荷は、最大で20MW/m²に達する。これは、小惑星探査機が大気圏突入の際に受ける表面熱負荷に匹敵し、スペースシャトルが受ける表面熱負荷の約30倍に当たる。構造上プラズマに直面する外側垂直ターゲットは、プラズマからの熱負荷や粒子負荷などに晒される厳しい環境で使用されることから、その構造体は非常に複雑な形状を有しており、高精度の製作・加工技術が要求される。
三菱重工は、ITER向けの主要機器であるトロイダル磁場コイル(TFコイル)について、全19基中5基の製作を受注し、2023年までに全基を出荷済み(注4)。今後、ダイバータや水平ランチャー(注5)といった主要機器製作にも継続して取り組んでいく。また、ITER計画に続いて建設が計画されている核融合原型炉についても、設計および開発を積極的に支援することで核融合エネルギーの実現に貢献していく。
(注1 ) 核融合は太陽が輝き続けられるエネルギー源であり、地上での核融合の実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用します。燃料となる重水素、三重水素の原料であるリチウム資源は海水中に無尽蔵にあり、核融合エネルギーはCO2を発生しません。そのため、エネルギーおよび環境問題を根本的に解決すると期待されています。
(注2) ITER計画は、核融合エネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクトです。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、2035年の核融合燃焼による本格運転開始を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めています。日本はダイバータやTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、量研がITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進しています。
(注 3) 三菱重工が2021年に受注した核融合実験炉イーターのダイバータ向け外側垂直ターゲット6基について、詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.mhi.com/jp/news/211213.html
(注 4) 三菱重工が量研から受注したITER向けTFコイルについて、詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください。
https://www.mhi.com/jp/news/210524.html
(注 5 ) 高周波を入射してプラズマを加熱する機器です。
Tags: カーボンニュートラル,原子力,核融合
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*リリース内容から一部「ですます調」で表記しています。