酒井重工業 が5月14日に発表した2024年3月期(2023年度)における売上高は、国内及びアジア向け販売が減少に転じたものの、北米向け販売の拡大により落込みをカバーし、前期比5.0%増の330億2千万円、営業利益は収益構造改革が進展するとともに円安による上振れ効果が加わり、同32.4%増の33億1千万円、経常利益は同42.8%増の33億2千万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同44.0%増 の24億4千万円となった。
2023年度における酒井重工業 グループを取り囲む事業環境は、世界的に拡大していたインフレと金融引き締め政策、そしてコロナ後の急速な経済回復からの調整期を迎えるとともに、中東紛争拡大による安全保障情勢の緊迫化や生成AI技術の普及に伴う社会構造変化により、世界の社会経済情勢は新たな変化局面に入った。
このような情勢のもと、酒井重工業グループでは、販売価格改定と高付加価値化による収益構造改革、人的資本投資とDXによる新たな付加価値創造と生産性向上、経済ブロック化を前提としたサプライチェーンとグローバル事業活動の修正により、新たな事業環境に適応した経営体質への転換を進めた。
酒井重工業2024年3月期通期データ
■連結地域区分別売上高
国内向け売上高は、国土強靭化加速化対策を背景とした堅調な建設投資が続いたものの、度重なる価格改定と 建設と物流の2024年問題を前にして建設機械投資の足踏み状態が強まり、前年同期比5.8%減の143億2千万円となった。
海外向け売上高は、斑模様な市場環境の中で北米とインドネシア市場が好調に推移し、同15.1%増の186 億9千万円となった。
北米向け売上高は、インフラ投資法を背景とした高水準の建設投資が続き、同25.1%増の97億円となった。
アジア向け売上高は、インドネシア市場が好調に推移したものの、中国及びASEAN市場が減速し、同2.9%減の75億6千万円となった。
その他市場向け売上高は、大洋州市場が堅調に推移するとともに、アフリカ向けODA案件が積み上がり、同103.8%増の14億3千万円となった。
■所在地別セグメント
日本:日本では、グループ企業向け製品・部品輸出が増加したものの、国内販売及び製品輸出が減少し、総売上高は前年同期比4.7%減の234億1千万円となった。営業利益は収益構造改革が進展し、同17.5%増の9億8千万円となった。
海外:米国では、高水準の建設投資に対して販売が好調に推移し、総売上高は同24.6%増の97億2千万円、営業 利益は売上増加と収益構造改革により同68.7%増の11億6千万円となった。
インドネシアでは、国内販売が好調に推移する一方で第三国向け輸出が減少し、総売上高は同1.8%減の 68億8千万円となった。営業利益は国内向け直販の増加により同20.1%増の10億円となった。
中国では中国国内市場が低迷する一方で、グループ企業向け製品・部品輸出を拡大し、総売上高は同24.6%増の19億7千万円、営業利益は同56.2%増の2億円となった。
■今後の見通し
今後国内市場では、国土強靭化の為の5ヵ年加速化対策により引き続き底堅い建設投資が続くものの、建設機械を始めとした幅広いコスト上昇と建設と物流の2024年問題によるサプライチェーン全体の構造調整が続いており、一時 的な足踏み状態の後に回復基調に回帰するものと期待される。北米市場では、インフラ投資法に基づく高水準の政 府建設投資が続いており、堅調な市場環境が期待される。アジア市場では、中国市場の低迷が続くもののASEA N市場では堅調な内需による底入れが期待される。
また国内では、海外との格差均衡に向けた物価、賃金、金利の上昇が予想される。世界では、ウクライナ及び中東情勢の緊迫化による世界経済の分断が進んでおり、サプライチェーンリスクと資源・物流コストの高止まりが続くものと予想される。
このような市場環境変化とコスト再上昇局面において酒井重工業グループでは、販売価格改定の継続、事業の高付加価値化、DXによる新たな付加価値創造を通じた収益構造改革、賃金改善と雇用安定化、現場を動かす技能者増強、職場環境整備等の人的資本投資により、収益構造と人的組織能力の増強を進めていく。
また引き続き、アジア市場深耕と北米市場展開、海外事業領域拡大、新技術活用による次世代事業開発、需要変化対応力強化による成長戦略を進めるとともに、積極的にESGを推進し、中長期的な企業価値向上を目指す。
2025年3月期(2024年度)の連結業績は、売上高330億円(前期比0.1%減)、営業利益27億3千万円(17.7%減)、経常利益27億円(18.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益18億3千万円(25.0%減)を予想している。
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