酒井重工業は3月11日、フィスコ社の企業調査レポートを公開した。以下、要約原文。
█ 要約
2024 年 3 月期第 3 四半期は前年同期比 62.7% の営業増益。
特に北米向けが堅調も、増益ペースはややスローダウン
酒井重工業 は道路舗装用ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーである。長い歴史を有し、国内シェアは 70% 超を誇っており、近年では北米や東南アジアを中心に海外市場の開拓に注力している。
- 2024 年 3 月期第 3 四半期の業績概要 2024 年 3 月期第 3 四半期の連結業績は、売上高が 24,301 百万円(前年同期比 9.8% 増)、営業利益が 2,580百万円(同 62.7% 増)、経常利益が 2,676 百万円(同 68.7% 増)、親会社株主に帰属する四半期純利益が 1,947
百万円(同 66.1% 増)と、おおむね計画どおりだった。地域区分別売上高では、国内は国土強靭化加速化対策を背景として堅調な市場環境ながら、度重なる価格改定、幅広いコスト上昇に対して設備投資動向が足踏み傾向となり、売上高は前年同期比 1.9% 増となった。海外売上高も堅調に推移しており、同 17.5% 増となったが、
特に米国ではインフラ投資法を背景とした道路建設投資の拡大と円安効果により同 31.8% 増となった。アジア向けは、インドネシアで需要回復が進んだものの中国及びインドネシアを除いた ASEAN 市場(主にタイ、ベトナム)が減速し、同 3.5% 減となった。価格改定効果や輸送費の落ち着き、円安などにより売上総利益率が
29.1%(前年同期は 25.6%)と改善し、販管費が 10.5% 増に留まったことから営業利益は大幅増益となった。
しかしながら、第 3 四半期会計期間だけを見ると営業利益は 18.5% 増に留まっており、増益ペースは上期に比べるとややスローダウンしている。 - 2024 年 3 月期の業績見通し
2024 年 3 月期の連結業績は、売上高が 33,100 百万円(前期比 5.2% 増)、営業利益が 3,300 百万円(同 31.7% 増)、経常利益が 3,300 百万円(同 41.8% 増)、親会社株主に帰属する当期純利益が 2,300 百万円(同 35.7% 増)と
予想されており、第 2 四半期時点で上方修正した予想値と変わっていない。世界的にインフラ投資が拡大するなか、世界の建設機械需要は底堅く推移すると予想しているが、一部では鈍化の懸念があり、下期について同社はかなり慎重な見方だ。特に今まで業績を牽引してきた米国市場では、需要は堅調ながらパナマ運河の状況によって部品調達に遅れが出る可能性があり、同社は第 4 四半期についても慎重な見方をしている。現時点において通期予想が下振れる可能性は低いが、一方でさらなる上方修正については過大な期待は禁物と思われる。 - 中期の成長戦略
同社は、2021 年 6 月に 2026 年 3 月期を最終年度とする「中期的な経営方針」を発表した。最終目標として
「企業価値・株主価値の向上」を掲げ、これを達成するために「事業の成長戦略」と「効率的な資本戦略」を推進する方針だ。定量的な目標としては、2026 年 3 月期に売上高 300 億円、営業利益 31 億円、ROE(自己資本当期純利益率)8% を実現し、安定的に配当性向 50% を維持することを目指す。初年度である 2022 年 3 月期、次年度である 2023 年 3 月期の業績は堅調に推移し、2024 年 3 月期もここまでは堅調に推移しているが、現時点でこの計画は変更しておらず、数値目標も据え置いている。2024 年 3 月期の配当については、ROE が 6.0%を上回る見込みであることから、公約どおり配当性向 50% として、年間配当を 270.0 円(中間 90.0 円、期末180.0 円)へ増配することを発表済みだ。このように、ROE の改善に向けて明白な資本政策を発表し、それに沿っ
た株主還元を実行している同社の姿勢は、大いに評価に値する。 以上