・オペレータの負担を軽減し、鉱山現場の安全性や生産性の向上、燃料消費の削減に寄与
日立建機は3月4日、超大型油圧ショベルの掘削・積み込み動作を支援するシステムを開発したと発表した。同システムの実用化を進めるため、2024年3月下旬より、資源大手リオ・ティント社が操業するオーストラリアの鉱山で実証試験を行う。
運転支援システムの活用により、将来の鉱山現場におけるオペレータの負担軽減、鉱山現場の安全性や生産性の向上、燃料消費の削減に寄与する。また、実際に顧客が運営する鉱山現場で実証試験を行うことで、運転支援システムの実用性を実証し、さらなるシステムの精度向上をめざす。
鉄鉱石や銅などの鉱物資源を採掘する鉱山現場は、24時間365日、安定した稼働が求められている。鉱山現場で稼働する超大型油圧ショベルのオペレータは、周辺機械との接触や衝突に留意しながら、効率よく鉱物資源を掘削し、ダンプトラックに積み込む作業を繰り返し行う必要がある。そのため、鉱山現場におけるオペレータの作業負担の軽減や安全性・生産性の向上は、重要な課題となっている。
今回の実証試験は、リオ・ティント社が西オーストラリア州ピルバラ地域で操業する鉄鉱石鉱山で行う。リオ・ティント社が保有する超大型油圧ショベルEX3600-7(運転質量360トン)のバックホウ仕様機にセンサーやモニターなどの機材を取りつけ、運転支援システムによる掘削・積み込み作業の性能検証や、運転室に設置するモニター表示のユーザビリティの検証を行う。
日立建機は、今回のリオ・ティント社とのパートナーシップのように、鉱山現場での実証や顧客との協創で得た知見により、2025年から順次、運転支援システムの実用化をめざす。いずれの機能も、EX-7シリーズ 超大型油圧ショベルEX2000-7~EX8000-7(運転質量200~800トン)のバックホウ仕様機への後付け対応を可能とし、すでに顧客が保有している機械の付加価値向上にも貢献する。
■実証試験で検証する運転支援システム
・掘削アシスト機能
掘削アシスト機能は、センサーで検出した油圧シリンダーの負荷やフロントアタッチメントの動作などから状況を判断し、状況に応じて油圧ショベルの動作を自動制御するもの。
鉱物資源を効率的に掘削するためには、1回動作あたりの掘削量をなるべく多くすることが求められる。一方で、掘削時にバケットの負荷が過大になると、油圧回路の保護機能が働き、それ以上の掘削力が出せなくなり、フロントアタッチメントの動作が断続的に停止してしまう。この場合、エンジンや油圧装置への負荷が最大となり続けることから、作業時間のロスによる生産性の低下や、燃料消費の増大につながる。
熟練のオペレータは、フロントアタッチメントの動きや油圧回路が発する音・振動から判断してシリンダー負荷を軽減させる操作が可能だが、経験の浅いオペレータでは上手く行えない場合がある。同機能により、オペレータの経験に関わらず、シリンダー負荷を軽減させる操作を自動で行うことができる。
・積み込みアシスト機能
積み込みアシスト機能は、超大型油圧ショベルが掘削した鉱物資源をダンプトラックに積み込む際、フロントアタッチメントを自動で制御して、ダンプトラックとの衝突回避に寄与する。
通常、オペレータはダンプトラックのボディ(荷台)の位置・向き・高さを認識して、フロントアタッチメントを操作しながら、車体を旋回させて積み込み作業を行う。
積み込み作業時、オペレータは、ダンプトラックや周囲の構造物との接触や衝突を防ぐため、油圧ショベルのフロントアタッチメントを上げる操作と本体の旋回操作を複合させる必要がある。経験の浅いオペレータには、この複合的な操作は難易度が高く、熟練のオペレータでも高い集中力が必要。
同機能により、フロントアタッチメントを上げる操作が自動で行われるため、オペレータは旋回操作のみに集中することができ、オペレータの負担軽減につながる。
また、超大型油圧ショベルの運転室内に設置した専用モニターには、オペレータの操作や機械の状況把握に役立つ、バケットの積載量やフロントアタッチメントの油圧シリンダー負荷状況などの情報を表示する。
リオ・ティント社とは、2023年8月より、超大型油圧ショベルのブームとアームの耐久性を検証する実証試験も行っており、日立建機にとって重要なパートナー企業の一つ。
日立建機グループは今後も、顧客との協創を通じて、安全性と生産性の向上や、顧客の機械のライフサイクルコストの低減に寄与するべく、「真のソリューションプロバイダー」として、顧客の課題解決に取り組んでいく。
■日立建機について
日立建機は、油圧ショベル、ホイールローダ、道路機械、鉱山機械などの開発・製造・販売・サービスの事業をグローバルで展開している建設機械メーカー。新車販売事業に加えて、部品・サービス、再生(部品・本体)、レンタル、中古車の「バリューチェーン事業」を拡大し、革新的なソリューションを顧客に提供する真のソリューションプロバイダーとして、顧客と共に成長をめざしている。世界に約25,000人の従業員を擁し、2022年度(2023年3月期)の連結売上収益は1兆2,795億円、海外売上収益比率は82%。
ニュースリリース
*リリース内容から一部「ですます調」で表記しています。
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