日精エー・エス・ビー機械が11月10日に発表した2023年9月期(2022年10~2023年9月)連結業績によると、第4四半期に過去最高となる四半期売上を進めた結果、売上高は34,798百万円(前年同期比114.9%)と過去2番目の高さとなった。利益面は、円安効果に加え、原材料高に応じた柔軟な価格政策を継続した結果、営業利益は7,166百万円(同129.0%)となった。一方、経常利益は上半期における一時的な円高進行によって発生した為替差損の影響により6,953百万円(同77.9%)、親会社 株主に帰属する当期純利益は5,085百万円(同82.9%)とそれぞれ減益となつた。
2023年9月期の世界経済は、コロナ禍からの経済活動再開の動きが世界各地で本格化する一方、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレ進行、欧米諸国での政策金利の引き上げや急激な為替変動など、先行き不透明な状況で推移した。
一方で、同社グループの属するストレッチブロー成形機業界においては、安全で衛生的なプラスチック容 器の需要は底堅いものがあり、事業活動は今後も堅調に推移すると思われる。
こうした環境下、同社グループは「人と社会に豊かさを提供する」「高い技術、サービスで恒久的な存続を追求 する」との経営理念に基づき、中長期的な成長発展方針を継続し、事業規模の拡大を見据えた各種戦略的施策の 展開に注力した。
技術面では、同社の得意領域である、高品質・高付加価値生産が特徴の1ステップ成形機(以下、1ステップ 機)の優位性を高める「ゼロ・クーリングシステム」の更なる進化を図るとともに、金型交換時間短縮仕様搭載機の上市など、製品競争力の向上に努めた。また、飲料市場向け大量生産機のシェア拡大や、環境問題対応 を含む幅広い用途への容器利用を企図して、高品質・高付加価値な容器成形法および新型機群の開発を強化して いる。
販売面では、新たに創設した営業本部体制のもと、グローバル且つ組織的な営業活動を展開し、受注獲得に努めた。特に当期においては、コロナ禍を経て世界各地の主要展示会への出展を再開した結果、顧客との接点が増え、多くの引き合いを獲得した。また、保守部品の在庫分析・適正配置に努めた結果、ア フターサービス分野が強化され安定収益の確保につながった。
生産面では、グローバル生産体制の最適化を図るため、増産対応とリスク分散を進めた。具体的には、イ ンド工場での成形機等の生産能力増強と納期短縮を図るべく、工作機械等への設備投資を完了し、生産体制を強化した。また、日本国内においては、将来の事業拡大に備えるべく、本社工場近隣に新たな工場用地を取得し、より強固な生産体制の構築を検討している。
環境対応技術では、「3R+Renewable」への取り組みを継続し、「材料使用量の削減」、「PETボトルリユースの提案」、「リサイクル材料の使用促進」、「バイオプラスチックのボトル成形」などのソリューションを提供することで、全世界において環境配慮型の技術提案を強化した。なお、第1四半期にドイツで開催された世界最大の プラスチック・ゴム展示会「K2022」で披露した4台の新技術は、顧客から大きな関心を集めており、持続可能な プラスチック容器市場へ拡大すべく、今後も技術開発を強化していく。
販売成績については、受注環境が好調に推移したことに加え、為替の円安効果もあり、当期の受注高は 35,181百万円(前年同期比105.9%)と過去最高となり、受注残高も14,716百万円(前年同期末比97.8%)と高水 準で終えた。
■製品別売上状況
製品別の売上高状況については、全ての製品で前期を上回った。特に、年度を通して好調だった金型が10,488百万円(前期比113.9%)、部品その他が4,590百万円(同118.7%)とそれぞれ過去最高となり、容器設計からアフターサービスまでを一貫して提供する同社のビジネスモデルの堅調さを示している。
■セグメント(地域)別売上高状況
米州:堅調な中南米地域に加え、第4四半期には北米地域での受注環境が改善した結果、受注高は10,817百万円(前期比100.2%)と前期を上回った。売上高は、不透明な景況感を背景に北米地域での成形機売上が減少したものの、好調なアフターサービス需要により、金型および部品その他が増加したため、 地域全体の売上高は10,643百万円(同101.8%)と増加した。セグメント利益も製品ミックスの変化による 利益改善等により1,363百万円(同120.5%)と増益となった。
欧州:前述の世界最大の展示会「K2022」への出展など、営業活動を強化した結果、受注高は7,391百万円(前期比116.6%)と過去最高となり、売上高も6,850百万円(同127.9%)と高水準となった。セグメント 利益も増収効果等により727百万円(同150.6%)と増益となった。
南・西アジア:インド国内市場が好調に推移した結果、受注高は11,081百万円(前期比112.1%)と過去最高となり、売上高も10,192百万円(同107.1%)と過去2番目の高さとなった。セグメント利益も増収効果等により1,419百万円(同149.7%)と増益となった。
東アジア:日本国内の引き合いは比較的堅調に推移したものの、その他地域の需要が弱含んだため、受注高は 5,891百万円(前期比94.9%)と前年同期を下回った。一方、売上高は、豊富な受注残高を消 化した結果、地域全体の売上高は7,111百万円(同143.7%)と過去最高となった。セグメント利益も増収 効果等により6,614百万円(同113.8%)と増益となった。
■2023年9月期連結業績の見通し
次期(2023年10月1日~2024年9月30日)においては、長期化するロシア・ウクライナ情勢に加え中東情勢の悪化など地政学リスクの増大のほか、世界的な金融引締めの影響が懸念されるなど、世界経済は先行きに不透明な状況にある。
一方、ストレッチブロー成形機業界においては、安全で衛生的なプラスチック容器の需要は底堅く推移す ることが見込まれ、加えて、気候変動やプラスチック環境問題などの社会課題への関心の高まりは環境対応技術に強みを持つ同社製品の需要を押し上げることが想定される。
同社は、業界のリーディングカンパニーとして、先進的な研究開発活動を継続するとともに、気候変動問題や ESG経営などの社会課題に積極的に取り組むことで、中長期的な事業規模の拡大を図り、恒久的な存続を追求していく。
2024年9月期連結業績は、売上高372億円(前期比6.9%増)、営業利益78億円(同8.8%増)、経常利益79億円(同13.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益55億5千万円(同9.1%増)と予想している。
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