川崎重工業が11月8日に発表した2024年3月期第2四半期累計(4〜9月)連結業績によると、受注高は前年同期比58億円減少の8,608億円(前年同期比0.7%減)、売上収益は前年同期比95億円増収の7,693億円(同1.3%増)、事業損益は前年同期比636億円悪化の328億円の損失、税引前四半期損益は前年同期比704億円悪化の344億円の損失、親会社の所有者に帰属する四半期損益は前年同期比471億円悪化の233億円の損失となった。
世界経済は、先進国における賃金上昇や底堅い雇用に支えられ個人消費を中心に堅調に推移している。一方、 米国での金融引き締めによる景気減速懸念や、長期化する中国経済の低迷、地政学リスクの増大等、世界経済の先 行きに対する不透明感が高まっている。
国内においては、好調な雇用情勢に加え、設備投資やインバウンド需要の増加等により実質GDPがコロナ禍前の水準を上回るなど回復が続いているが、エネルギー価格の高騰や長引く円安による物価上昇には注視が必要。
このような経営環境の中で、第2四半期連結累計期間における川崎重工グループの連結受注高は、航空宇宙システ ム事業などで増加となったものの、精密機械・ロボット事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの減少により、全体でも減少となった。
連結売上収益については、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業などが減収となったものの、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増収により、全体でも 前年同期比で増収となった。
利益面に関しては、事業損益は、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増益はあったものの、航空宇 宙システム事業、精密機械・ロボット事業での悪化などにより、前年同期比で悪化となった。親会社の所有者に帰属する四半期損益は、事業損益の悪化などにより、前年同期比で悪化となった。
■セグメント別業績の概要
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、今後の需要増が期待される。民間航空機については、航空旅客需要はほぼコロナ前水準に回復しており、 機体のコロナリバウンド需要が旺盛なことから、機体・エンジンともに需要が増加している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品が増加したことなどにより、 前年同期に比べ675億円増加の1,932億円となった。
連結売上収益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品などが増加したものの、 民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を一括計上したことなどにより、前年同期に比べ157億円減収の1,292 億円となった。
事業損益は、防衛省向けや民間航空機向け分担製造品、民間航空エンジン分担製造品などの増収による増益はあ るものの、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を一括計上したことなどにより、前年同期に比べ497億円悪 化して527億円の損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの収束により利用者数が回復し、国内外で鉄道車両への投資が再開しつつある。一方で、足元への影響は限定的ではあるものの、電子部品等の供給不足や物流混乱、原 材料価格の高騰については、収束が見えつつも注視が必要。中長期的には、海外市場では都市交通整備、アジ ア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれる。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向け案件が減少したことなどにより、前年同期に比べ92億円減 少の301億円となった。
連結売上収益は、国内向け車両が減少したものの、米国向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ255 億円増収の841億円となった。
事業損益は、増収はあったものの、国内の操業が低下したことなどにより、前年同期並みの3億円の利益となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界的なカーボンニュートラルの実現を目指す 動きの影響を強く受け、川崎重工が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。また、国内外の分散型電源需要及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの供給安定性 など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費の高止まり等による受注、売上収益へ の影響には注視が必要。このような経営環境の中で、連結受注高は、防衛省向け艦艇用機器などの受注はあったものの、国内向けごみ処 理施設整備・運営事業の大口案件やLPG/アンモニア運搬船の受注の多かった前年同期に比べ200億円減少の2,184億 円となった。
連結売上収益は、エネルギー事業やLPG/アンモニア運搬船を中心とした船舶事業を主要因として、前年同期に比 べ133億円増収の1,478億円となった。
事業利益は、LPG/アンモニア運搬船の増収や持分法による投資利益の増益などにより、前年同期に比べ54億円増 益して85億円となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国以外の地域における建設機械市場については堅調に推移したが、中国建設機械市場は、不動産不況の長期化等の影響により需要が低迷した。
ロボット分野では、メモリを中心とする半導体市場の落ち込みや米中経済摩擦の影響により、半導体製造装置向けロボット需要は減速が続いており、回復の時期は見通しにくい状況だが、AI関連やグリーン投資関連等の新たな需要を織り込みつつ、2024年度から回復するものとみられている。また、欧米を中心にインフレに対する金融引き 締めの影響等による不透明感が強く、一般産業用ロボットも足元では成長が鈍化する状況になっているが、人件費上昇による自動化需要が潜在的に高まっている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボット等が減少したことなどにより、前年同期に比べ364億円減少の1,030億円となった。
連結売上収益は、中国建設機械市場向け油圧機器や半導体製造装置向けロボット等が減少したことなどにより、 前年同期に比べ146億円減収の1,030億円となった。
事業損益は、減収に加え、操業低下の影響などにより、前年同期に比べ101億円悪化の46億円の損失となった。
<パワースポーツ&エンジン事業>
パワースポーツ&エンジン事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響が落ち 着いたものの、主要市場である米国と欧州では引き続き需要は堅調に推移している。また、東南アジア市場は国 ごとの差はありつつも全体として前年度より回復している。
このような経営環境の中で、連結売上収益は、東南アジア向け二輪車の減少はあったものの、欧州向け二輪車及 び北米向け四輪車が増加したことに加え、為替レートが円安に推移したことなどにより、前年同期に比べ19億円増 収の2,671億円となった。
事業利益は、二輪車、四輪車の拡販や為替好転の影響はあったものの、販売促進費や固定費の増加などにより、 前年同期に比べ49億円減益の231億円となった。
<その他事業>
連結売上収益は、前年同期に比べ8億円減収の379億円となった。 事業利益は、前年同期に比べ13億円減益の5億円となった。
川崎重工グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来 モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、 更には、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業や 電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を着実に進めている。
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
2024年3月期の連結業績については、為替レートが円安で推移していることやエネルギーソリューション&マリン事業における採算性の改善があるものの、航空宇宙システム事業におけるPW1100G-JMの運航上の問題に係る損失を当期に一括計上したことや精密機械・ロボット事業における販売見通しの引き下げにより、売上収益は前回公表(8月8日)から600億円減収の1兆8,400億円(前期比6.6%増)、事業利益は前回公表値から380億円減益の400億円(同51.4%減)となる見通し。
上記事業利益の見直しに伴い、税引前利益は210億円(同70.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は120億円(同77.4%減)となり、税 後ROICは1.5%、ROEは2.1%となる見通しです。
連結受注高は、PW1100G-JMの運航上の問題に係る損失による減少があるものの、防衛省向けの増加などにより前 回公表値から100億円増加の1兆9,100億円(6.3%減) となる見通し。
なお、業績予想における為替レートは、1ドル=140円、1ユーロ=150円を前提としている。
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